留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

特別インタビュー

「戦え、大学生!」

 古賀 洋吉氏

古賀洋吉さん(Yokichi Koga) (写真中央が古賀さん)
東京都出身。2000年、明治大学政治経済学部を卒業。
大学在学中からインターネットに親しみ、オレゴン大学に留学。
明治大学の嘱託職員として情報教育の仕組みづくりに携わった後、ITベンチャーを起業した。
卒業後はコンサルティング会社などを経て、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるGlobespan Capital Partnersに転職。
2014年からシリコンバレーにて、「Drivemode」のCEOを務める。
「人の役にたつわくわくするようなイノベーションを世界に広げる」を目標に活動している。
明大卒業生で唯一のハーバードMBA取得者でもある。

留学に行く時点でレールから外れた変人だと思う

―まず最初にお伺いしたいんですけど、大学生の中には留学費やTOEFLの点数、親の承諾、就活の時期など様々な問題を抱えている人がいますが、それらに対してどう思いますか。古賀さんは留学に行くなら早い方がいい、と言う考えをお持ちだと仰っていましたが、留学への道が険しい人も多いと思います。

「いやあ、まず留学する時点でレールからは外れると思いますね。留学しておいて普通の人生を歩めるなんてそれは間違ってると思う。(笑)」

―あ、そこでもう間違えているんですね…!

「普通に仕事をするんだったらほとんどの場合英語なんていらないですよね。だから僕は1年外にいる時点で普通に生きることはあきらめていました。お金の問題が出来たり、借金が出来たり…弱みがいっぱいできるわけでしょ、何かがうまくいかない理由が。それが気になるようだったら留学なんてやめちゃえばって思いますね。自分でやりたいことがあって、なりたい自分があって、そのためにはこういう風に生きていきたいんです、っていうものがあるんだったら行けばいいけど。」

―では全員に留学をすすめるわけではなく、行きたい意志がある人は早いうちに行った方がいい、と言うわけですね。

「そうですね。多くの人は留学なんてやめた方がいいですよ。無理してやるものではなくて、やりたかったらやればいいものだと思います。人と違う生き方をした時点で何が正解かを誰からも教えてもらえなくなるわけですよ。僕なんかもう日本の企業で雇ってもらえる気がしないですもん。しかも留年・浪人・留学で人よりも年上だし。だけど、その分強みも出来ました。例えば僕は学生でありながら海外に交渉をしにエンジニアとして行くことが出来た。普通の学生にはできない僕の強みです。」

―確かに普通の学生ならできない強みですね。

「留学と言うのは強みをつくるっていう話をしているんですよね。だから自分の弱みが嫌だっていうなら留学なんてやめてしまえと。」

―改めて、留学をするって覚悟がいることなんですね…!

大学がつまらない。転校も考えた学生時代

―今の大学生って、授業中に携帯をいじったり居眠りしたりする無気力な学生が多いと思うんです。古賀さんも大学生の時に、同じように授業がつまらないと感じていたとお伺いしたのですが、そのあと自分から主体的に行動して授業以外で面白いことを探したりしていますよね。どういうきっかけで自分から行動しなきゃダメなんだって思うようになったのですか?

「僕は昔からコンピューターを使っていて、ちょうど学生の時にインターネットという概念が入ってきたんです。それで、これは大きくなるから学びたい!っていうのがその時にあったんですよ。だけど周りに教えてくれる人がいなかったんで、自分でいろいろやっていったんです。高校生と違って大学生って周りからなにかやれって言われることがないので、自分から何かしないとつまらなくて耐えられないんですよね。

―確かに大学生って自由ですよね。

「もう大学を辞めようかなって思ったりもしました。大学に残ってもいいし転校してもいいし、とりあえず自分の好きなことをやろうと思ったんです。他の学校も見学したりしたんですけど、あっ分かったと、どこに行っても同じだと。大学に期待するんじゃなくて、もう大人なんだから自分で自分のことは決めないといけないなって気づいたんです。自由になるって選択肢が増えるってことじゃないですか。だから僕は政治経済学部なのにコンピューターサイエンスを勉強しに留学に行ったんです。すごい個人的な興味によるものでしたね。」

コイバナは世界共通だと知ったオレゴン留学時代

―オレゴン留学時代に経験した面白かったことって何ですか?

「人ってあんまり変わらないんだなってことを感じました。僕は恋愛下手なんですけど、すごい恋愛相談を受けるんです。それがアメリカに行っても来るんですよ。」

―すごいですね(笑)

「言っていることは全然違うんだけど、本質的に困っていることや悲しいことは一緒なんですよね。そのメカニズムが。アメリカ人はこういう育て方をされているからこういう言い方をするってとらえ方をされがちだけど、本質的なところでは何も変わらないんです。例えば中国で育った人って人の並んでいる列にカットインしたりしますよね。あれはしょうがないんですよ。そうしないと一生バスに乗れないんですから。それがいいことか悪いことかは別として、そういうルールでやっているからカットインするだけで、ただバスに乗りたいだけなんです。表現方法や行動規範は違うんですけど本質的なモチべーションは近いんですよ。国によって差があるのは表面的なもの。だから本質的には恐れることはないしみんな分かりあおうと思えばわかりあうことが出来るんだってことを学びました。」

―すごい。みんな国籍は違うけど、同じ人間ですもんね。

私はどこから来たのか?ではなく私は何が出来るか?が大切

―ちなみに英語は得意だったんですか?

「全然できてなかったし、行った後もできなかったです。でも、なんというかテストの点と英語力はあんまり関係ないと思いますね。やっぱり圧倒的に利用が不足していたかなと。正直1年の交換留学では足りなかったと思います。だけど、留学したことによって自分は何が分からないかがよく分かったし、周りと相対的に見て自分も日本もちっぽけだなあということもよくわかりました。外国人がそんなに日本に興味がないということも含めて。それは日本にいては分からないとても大事なことだと思います。」

―えっ!日本にいると日本が好きな外国人が多いと感じることが多いんですけど、そうではなかったんですね…。

「日本のことを結構聞いてくれるんですけど、実際そんなに興味ないよね、と思うことが多かったですね。(笑)日本ってどこにあるのと聞かれたこともありました。日本にみんな興味を持ってくれている、と思っていること自体が思い上がりだと感じますね。」

―衝撃ですね…!

「仕事をする上でも、あなたどこから来たの?なんて会話はほとんどないです。大事なのは自分は何が出来るかであって、国籍ではありません。」

―なるほど、では自分をアピールするには英語で自分の本質を伝えないとダメ、つまり大切なのは英語が話せる・話せないということではなく、自分を伝えられるか・伝えられないかということなんですね。

TOEICは満点がスタートライン!?

「学生の時はそこまで考えなくてもいいと思いますけど、仕事するうえでは語学力は絶対に必要になってくると思います。学生時代は英語力がなかったっていいましたけど、今は日常会話では困らないレベルです。TOEFLとかTOEICはほぼ満点だと思います。」

―!!!

「それは最低ラインだと思います。そこからが、スタート。学生時代の1年間の留学で分かったことは、自分の英語のレベルですね。英語が全く話せない時って、英語を話す人がみんなすごく見えるじゃないですか。でも、ある程度話せるようになると、自分が思ってたよりずっとレベルの差があったことに気付くんですよね(笑)だから、そこに気が付けたことも含めて、自分が分かっていなかったことに留学のおかげで気が付けたなあと思います。」

大魔神が現れたら君はどうする?戦う、それとも…

―留学の学内選考のときって学生の熱意とか意志よりGPAやTOEFLの点数を重視しますよね。納得いかないなあって思うことがあるんですけどどう思いますか?

「う~~ん…。今になって思えばその気持ちは分かる。けど、留学というシステムが提供されているときに、そのルールに従って戦いたいんだったら戦えばいいし、それが嫌なんだったら自分で別の方法を探せばいい。提供されたオポチュニティーのルールに対して文句があるならやめてしまえと。ルールは向こうが決めることだし、そういう勝負。人生は不公平だし世の中は思い通りにならないけど、留学ってその思い通りにならないものの1つだと思うんですよね。だけど世の中には不条理なものがもっとたくさんある。こんなに自分がやりたいのにどうしてさせてくれないんだ!みたいなことってだいたいさせてもらえないんですよ。」

―確かに…。

「例えば大魔神が現れて、こう、世界を真っ暗にするわけですよ。その時に、ただ嘆くやつと戦うやつに分かれるってだけの話だと思うんですね。悪い奴に向かってお前が悪だ!!って言っても世の中は変わりませんよね。だから自分が強くなって戦うしかない。この世界で生きようと思うなら自分の腕に頼るしかないんです。確かに留学みたいに大きなものに関しては、不平等感もある。けどルールを変えることが不可能だとは思わないし、別のルールを探すことも可能だと思いますね。」

―自分の考えの甘さを感じました。選択肢はいくらでもありますもんね。

「僕たちは本当に恵まれているんですよ。いい国に生まれて大学にも通うことが出来て。たくさんの選択肢の中ですごく幸せな生活をしている。だから、ルールに関して文句を言う前に戦え!」

―戦います!

留学をする、自分が分かる、そして新しい生き方が発見できる

―最後に、高校生でもなく社会人でもなく「大学生」で留学をする意義を教えてください。

「難しい質問ですね…。まず高校生と大学生の違いについてですけど、大学生と言うのは自分で自分のことを決めないと何も始まらない初めての時期だと思うんです。それまでは授業も決まっていて、この通りにやればいいですよと言われ続けていた。だけど大学生は、お前はどうするの?と言うことを常に聞かれ続けるわけです。これって結構きついことだと思うんですけど、いろいろなことにチャレンジして自分のことを知ることが出来るチャンスでもあると思うんです。これは大学生の1番の強みだと思います。」

―大学生になると交友関係も広がりますもんね。

「自分を知ることは他人を知ることで成り立ちます。例えば自分の家族とずっと一緒にいたら新しいことって分からないじゃない?いろいろな人と会うことで新しい価値観や新しい生き方に出会うことが出来る。そして留学をすると自分の立場はマイノリティになって少数グループに入るから留学先の国の価値観も知ることが出来るし、他の留学生たちと密な時間を過ごす分本当に価値観が本当に広がるんですよね。日本を出て自分と他人との差に注目するとき初めて自分は日本人だなと認識することが出来ると思うんです。日本人は多様性がない方がいいと考える人が多く価値観の幅が狭いので、自分の生き方に疑問を持ちにくいですよね。だけど大学生で留学に行くことでこの価値観の幅がものすごい広がるんですよ。自分は当たり前だと思っていたのに全然違った、みたいな話がたくさんあって。当たり前じゃないんだったらこういう生き方をしてみてもいいのかなあって言うのがたくさん見つかるんです。」

―わくわくしますね。

「だから、留学は普段は知ることができないことを知ることが出来るチャンスだと思います。それって自分を幸せにするコツですよね。今までできなかったような意思決定が出来るようになること、自分に素直になること、自分はこういう生き方が出来るって発見できること、これが1番素敵なことなんじゃないかなあと僕は感じます。」

―なるほど。私も留学をして様々な価値観を知り、自分が本当にやりたいことを見つけたいです!古賀さん、ありがとうございました。

インタビュー実施日:2015/12/20
インタビュー実施場所:明治大学 駿河台キャンパス

【編集後記】

明治大学駿河台キャンパスで行われたGGJ Expo 2015の際にインタビューをさせて頂きました。ちょうどこの頃留学の準備をしていた私は、古賀さんのお話に何度もはっとさせられました。留学には大きなリスクが伴うこと、自分から行動を起こさなければ何も始まらないこと、社会は思っているより甘くないこと…。自分では分かっているつもりでも、やっぱりわかっていなかったんだなあ、自分は甘いなあと痛感せざるを得ませんでした。
古賀さんがおっしゃっていた通り、日本はとても恵まれた国だと思います。私は今当たり前のように大学に通い、長期休みには気軽に旅行に行き、春休みが明ければ3年生になります。こんなに恵まれているのにも関わらず、留学の選考方法に対して文句を言っているなんて本当に恥ずかしいことだと思いました。小さい!本当に小さいです。
私には何が出来るのだろうか。強みなんてあるのだろうか。インタビューを通して私がこう感じたように、この記事を読んでいるあなたもこう感じているのではないでしょうか。私は、大学生が持つ可能性は無限にあると思っています。少し大げさかもしれないけど、私たちはやりたいと思ったことに片っ端から挑戦するだけのお金と時間を手にすることが出来るんです。だから、なんとなく大学生活を送っている人も、これを機に自分を見つめ直してみませんか?

文責:
白石 彩

インタビュー:
明治大学2年 白石
東洋大学2年 竹内
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