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Inter-generational Knowledge Transfer

特別インタビュー

「“逃げない”留学」~何か逃げ出したいことがあるあなたへ~

グローバルアストロラインズ 児玉教仁氏

児玉教仁さん(Norihito Kodama)

1972年、静岡県生まれ。高校卒業後、アルバイトで学費を稼ぎ20歳で渡米を経験。2006年にはハーバード大学経営大学院でMBA取得。現在は、グローバルアストロラインズ(http://gastrolines.co.jp)という国際社会で戦える人材を育てるための会社を起こし、代表取締役を務めている。有名著書に留学体験記の『パンツを脱ぐ勇気』がある。

これは「言い逃れの名手」という悪名を持つ鮎川が本気で反省し何かを一途に「頑張る」という決意を固めた今回のインタビューである。

「物事を長く続ける」ということを、した経験がない。
熱しやすいが冷めやすい。短略的で飽きやすい。そう自分のことを分析していた僕は、「パンツを脱ぐ勇気」という著書でも有名な、児玉教仁さんにお会いしたいと思った。これがきっかけだ。
パッションに満ち溢れた児玉さんの言葉を聞けば、「留学」という長い戦いに負けないためのヒントが得られると思っていたが、大正解だった。

2016年3月某日。東京の二子玉川にある児玉さんのオフィス。そこで開口一番に飛び出した、児玉さんの言葉は「僕は、元は熱い人間じゃなかったんですよ。」だった。

児玉さんは、今でこそ「パンツを脱ぐ勇気」という破天荒な留学体験記の著書を出版されているが、意外にも子供のころは積極性を欠いていたそうだ。
閉鎖的なコミュニティを愛するシャイで内向き。よくいるタイプの生徒だった。生まれ故郷は静岡県の清水。海外への興味を抱くチャンスの方が少ない環境で育った。だから、ひょんなことから海外への興味を抱いた児玉少年が実際に留学への本格始動をするまでに時間を要したことは環境的にも性格的にも、必然的だったといえる。
「やるぞー」
と思うだけで動けない、そんな日々が続いた。ただ、「動きたい」という気持ちから徐々に能動的に人と関わり始めるようになった。「留学に行きたい」と決意してから自分の中に起こる「小さな成長の連続を実感してきた。」というが、学校やシステムを探すという実践的な取り組みには踏み込めないもどかしさが漂う日々が続いていた。

非常に共感できた。
「留学したい。」というと周りからの目も変わる。自分の生活スタイルも程度の良し悪しはあれ、改善の兆しを見せる。ただ、多くの人はそれで満足してしまう。対外志向の強い自分に自惚れてしまい、アクションを起こすことを忘れて時が流れる。児玉さんも最初は同じだったのだ。
しかし、そんな境遇下での生活を送っていた児玉さんは留学を実際に経験した。そのためには大きなきっかけとなる二つの出来事があったというので聞いてみた。

「人」

児玉少年にとって、先輩Aとの出会いは留学への歩みを大きく進める端緒となった。
今では考えられないほど当時の日本の学生の留学熱はとても低かったという。1つの高校に1人、留学したいと思っている人がいれば万々歳だった。そんな中、素敵な先輩に出会えたことは「幸運だった」。自分と同じような環境で過ごしてきた中で留学まで踏み切った先輩からのアドバイスは全てが金言の様だった。その先輩との出会うのと時を同じくして、通っていた留学の斡旋所で「試験の成績が芳しくない僕」でも通うことが出来る米国の大学を発見。面接を経て、見事に合格をつかみ取ったのであった。
人から受ける影響というのは大切だと僕も思う。現代は児玉さんの少年時代よりも留学に行くための環境や世論は良いものを感じる。良い「人」と出会える機会も多いのではないだろうか。

「水たまり」

もう一つのきっかけは、水たまりだ。当初希望していた学費の安い州立大学ではなく、私立大学へ進学してしまいそうになった児玉少年は、留学開始を1年先に先延ばした。そして学費を自分で賄うべくアルバイトを開始した。
最初に就いた職は新聞配達。高校生ながらに早朝からのきつい仕事に取り組む児玉少年は多くの先輩から温かい対応を受けて、「社会に感謝」する研修時代を過ごした。
慣れてきたある日、仕事を終えて習い事として続けていた空手の道場へと向かった児玉少年。そこに「水たまり」が立ちふさがった。当日は大嵐。水嵩のだいぶある「水たまり」が目の前に。
「今までの僕だったら、そういった困難な状況からはすぐ逃げていたと思うんです。だってバイク壊れちゃうじゃないですか?服も濡れちゃうし。むしろそこを通ってまで空手に行っても誰にも褒められないだろうなって。でも、その日はなぜか違った。『ここで逃げたら一生このままだ』って思えたんですよね。もし、明日が雨が小降りになったとしても水たまりを理由に僕は休むんだろうし。逆境から逃げ続ける人生で終わってしまうって。そんなのは嫌だった。だから行ったんですよ、空手道場に。それが大きかった。逃げなかったことで戦う姿勢とか負けてたまるかって思えるようになったんですよね。空手にも前よりも身が入ったし。」
児玉さんは当時を振り返ってこのように語ってくださった。

留学に置き換えてみる。
飛び立つまでの僕らの前には様々なハードルが立ちふさがっている。英語のこと、お金のこと、友達作りのこと・・。そうした障壁を前に逃げ出すことで楽になれるのは確かだ。
しかし、乗り越えた先に楽さよりもずっと素晴らしい感情が手に入れられる環境があるとしたら。僕らはそれを見ぬまま白旗をあげてしまうことになる。勿体ないんじゃないか?
留学だけに言えた話ではないのだが。
「ハードルの前で悩むくらいならやめた方がいい。」
今ほど、留学の仕組みが整っていなかった時期を経験した児玉さんの放つ言葉は重い。

「英語」より「コミュニケーション」を勉強しなさい

「留学に行くまでに達しておくべき語学力ってどのくらいですか?」
結論から言おう。この質問は浅はかなものだった。
「コンテキストの話を聞いたことある?」
児玉さんは、答えに変えてそう切り出した。僕は聞いたことがなかった。
どうも「日本人がハイコンテキスト」なのだそうだ。

文脈という意味を持つ英語だが、いったいなんだろう。僕は切り込んだ。

「例えば、あの人って大阪のおばちゃんみたいだよね。って僕が言ったとすると、皆はどんな人を想像する?」
うーん。ヒョウ柄の服を着た、よく話す我の強い女の人?
「僕は、今言語的には大阪にいるミドルエイジの女性としか言っていないけれどそんな想像がつくじゃない?言語以上の情報がコンテキスト。日本人はこれを汲み取るのに長けているんだよね。」
理解できた。暗黙知というやつだろうか。全て言わなくても日本人は理解できることが多い。
「今週末空いてる?って聞かれて、今週はちょっと…。と返答すると日本人なら、あーこいつは都合が悪いんだ。って分かる。だけどアメリカではそうはいかない。YES? NO?って最後まで聞いてくる。それに慣れる必要があるんだよね。」

日本人はある種、とても優秀だ。空気が読める。言わんとすることを察する力に長けている。阿吽の呼吸のことわざを思い出す。
「日本でも留学生と話せる機会ってあるでしょ?そういう機会で英語もだけど、コミュニケーションの術を身に着けないと駄目だと思う。全く日本とあっちは違うから。」

「1聞かれたらフルで答えること」のほかに、目の動きも教わった。例えば、日本人の友人同士の関係で話し合う時に聞き手は話し手の目を見るけれど、話し手の多くが恥ずかしがる。それはあっちでは、誠実さの欠如とみなされる。大きく好感度を落としかねないということだ。
英語がいくら堪能でもコミュニケーション方法が分からずして友達なんてできない。とても大切なことを児玉さんは教えてくださった。

心がぽきっと折れるということ

留学に劣等感はつきもの。僕はそう考える。児玉さんはこの辺、「新しい環境に身を投じたら誰でも萎えるときはあるでしょ。」
児玉さんから飛び出した言葉に僕は目を丸くした。同時に安堵した。
あぁ、児玉さんのような破天荒にも思える人でも心やられた経験はあるんだ、と。
「その萎えを飛び越えた先の自分を想像する。」
これが児玉さん流の解決法。

難しいなと思った。困難にぶち当たった時というのは、先のことを考えづらい。今の悲しいという感情に浸った自分のことしか見えなくなるものだ。少なくとも僕はそうだ。
昨日までがどんなに楽しくても負の感情に支配されると先行きとか分からなくなる。でも、こればかりはトレーニング(経験)するしかないのだろう。事前に対処する術を知ったあなたはきっと、留学に行っても精神的タフさを保つことが出来るはずだ。

大学生のうちに留学する意味

最後に、大学生が今の時期だからこそ留学すべき意味についてのお考えを伺った。多くの人が答えを出すまでに多くの時間を割く質問だが、児玉さんは悩まなかった。
「人生のコックピットに座ることが出来る時期だから。」
今までの僕らは、親や先生、誰かが敷いてきたレールの上を歩んできた。それを、留学という全て自らの意志で決定、行動していかなくてはならないイベントを経て自分で操縦する人生へシフトさせることができるということだ。高校生にはまだ早すぎるやもしれないし、社会に出てからだと人生の主導権を移行させるには遅いやもしれない。適当な時期こそが大学生なのだ。語学や精神面での成長はともかく、自立はいつかは誰もがしなければならない儀式のようなもの。留学の持つ大切な意味を知れた気がした。

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