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特別インタビュー

「宇宙飛行士になれたのは,留学したから」 ~山崎直子さんのメリーランド州立大学留学経験インタビュー~

 山崎 直子

東京大学,同大学院航空宇宙工学専攻修士課程を修了後,宇宙開発事業団(現JAXA)に勤務.2001年に宇宙飛行士として認定され,2006年にはNASAよりアジア国籍女性として初めてMS(搭乗運用技術者)の認定を受ける.のち,2010年に15日間宇宙へ飛行する.
現在は宇宙政策委員という立場から日本の宇宙開発の発展のために活動を行っている.

山崎直子さんは,大学院の時,1年間休学し,アメリカ合衆国メリーランド州立大学へ留学した.留学について重点を置き,森瑛梨奈,小仲美奈がインタビューを行った.

きっかけは文通と宇宙

「中学一年生の時から,アメリカ合衆国オハイオ州の子と文通をしていたんです.だから,留学先としてアメリカ合衆国が浮かんだのは当然のことでした.」
世界中の国の中でなぜ,アメリカ合衆国でなければならないのか伺った.大学院の時,初めて海外を体験した山崎直子さんにとって,アメリカ合衆国の子とする文通は,とても魅力的で,その影響は大きなものだった.
さらにもう一つ,航空宇宙工学を志していたからこその理由がある.
「当時,航空宇宙業界において世界をリードするNASA(National Aeronautics and Space Administration)があったのも大きかったです.」
山崎直子さんが留学をされていた1994年は,日本人女性初の宇宙飛行(向井千秋さん)が行われた年でもある.この頃は宇宙といったらアメリカ合衆国という時代であった.

University of Marylandでなければいけない理由.

山崎直子さんは,湾岸戦争などの危険性を考え,留学に反対であった両親を説得する必要があった.まずは,金銭面を工面するためにロータリー奨学金を獲得した.
「私立大学の学費は高かったため,州立大学という選択肢が自然と見えてきました.さらに,メリーランド州立大学には,ロボットを入れて実験できるプールがあったので,面白そう!思ったのも決め手でした.」

乗り越えた苦労

山崎直子さんは,メリーランド州立大学へ留学する一か月前に,カーネギーメロン大学のサマースクールへ参加している.メリーランド州立大学での生活はどんなものであったのだろう.
「メリーランド州立大学生活1日目に,電気の契約をするために電話をかけたのですが,聞き取ってもらえずそのまま切られてしまいました.」
受話器越しでの英会話は,直接会って話すものとは違う.その日はベッドもなく,トランクをベッド代わりにして眠ったという.ここに,文化の違い,山崎直子さんのタフさが伺える.そんな困難を乗り越えるための必須アイテムについて伺ってみた.
「友人と話すときやテレビのニュースなど,要所要所で会話を録音していました.イントネーションの違いを意識して,発音の練習をしていました.」
録音しながら,会話している光景を思い浮かべてみた.飾らず,目標に向けて努力する姿勢が伺えた.2~3ヶ月後,ブレークスルーを迎え,スムーズに会話できるようになったという.

留学したから今がある

「留学していなければ,おそらく宇宙飛行士選抜で選ばれていません.なぜなら,実際に面接中にも留学を通して何を学んだか聞かれました.」
では,留学を通して一番何を学んだのだろうか.
「海外のチームで活動した経験は,宇宙飛行士を目指すうえで,大きい体験となりました.」
留学先には,アメリカ合衆国の学生だけでなく,各国の学生が集結していたという.異文化に適応していく能力は,宇宙飛行士として各国の宇宙飛行士と協力していく過程で必要不可欠である.
さらに,留学中に培った英語力も,宇宙飛行士選抜面接の際に役立ったという.
「面接中にいきなり英語でBy the way, と質問もされました.」留学によって将来の可能性がとても広がったことが伺える.
また,留学した際に,大学院を休学することになったことについて伺うと,
「遠回りも決して悪いことではないんですよね.今考えてみると意味がすごくあったなと思います.もちろん、留学だけではなく、国内で海外の人と活動する機会を活かす方法もあるかと思いますが、回り道してでも、色々な実体験を得ることは大切だと思います。」最短距離を目指すことがすべてではないのだ.

宇宙と留学を志す学生へ

「現在,留学先の選択肢として考えられるのは,アメリカ合衆国だけではないです.アメリカ合衆国は確かに吸引力があります.しかし,アジア諸国,ヨーロッパにおいての宇宙開発もどんどん進んでいます.」
人と違う道を進むものにこそ,価値が出てくるのではないだろうか?留学先の選択肢がたくさんあるのはとてもわくわくすることだ.

山崎直子さんの夢

最後に,現在博士課程の学生でもある山崎直子さんが見据える将来のビジョンについて伺った.「日本においても有人飛行できる機会を増やしていけたらいいです.」
インタビュアーである4人とも,将来宇宙へ行きたいと思っている.日本の宇宙開発を,これからも私たちが発展させていこう.

【編集後記】

今回,山崎直子さんにお話を伺う機会を得て,留学が宇宙飛行士になることができた一つの要因だったことを知り,留学が将来の自分に与えうる影響の大きさを感じました.また昔から山崎直子さんに憧れ,宇宙飛行士を志してきた私には,山崎さんの言葉一つ一つが心に響いてきました.そんな山崎さんに直接お会いしてインタビューをさせて頂き,大変貴重な経験ができたと感じました.(森瑛梨奈)

私の将来の夢は宇宙飛行士になることです.宇宙飛行士のオーラは例えば,緑色と青色の混じった,力強いものだろうと思っていました.しかし,実際の山崎直子さんは桜の花びらを思い起こさせるオーラの方でした.この色は,宇宙へ行って地球を遠くから見た人の色なのでしょうか?博士号をどこで取ろうか悩んでいる私にはとても貴重な,実りのあるインタビューでした.See you in Space! (小仲美奈)

文責:
森瑛梨奈 (東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 1年)
小仲美奈 (東北大学 工学部 機械知能・航空工学科 航空宇宙コース 3年)