留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

我慢して継続してこそ結果が得られる

上地 太子氏

2018年12月13日  707ページビュー
1年以上   イギリス   大学  

Q「なぜ留学しようと思ったのですか?留学にいたる経緯は?」
A「高校生の頃イギリスのバンドの音楽をよく聴いてるうちに英語が好きになったのと、好きだったバンドの歌詞が、イギリス文学からの引用が多くて、それでイギリス文学に興味を持った。大学も英文科に行ったんだけど、一回、大学三年生の春休みに短期の語学留学でロンドンの語学学校に1ヶ月行ったわけね。英語を勉強してたのは、将来仕事に有利だろうから、とかは全然考えてなくて、ただ単に英語が好きだったし、大学で英文学を専攻して勉強して文学とかが楽しかったから、はまったって感じかな。言語学もとても楽しかった。私は宮古島の方言が理解できたし、独特の発音とかもできて、よく言語学の先生から、この発音やってみて、とか言われて、人の口の中で舌が動いて音出す仕組みとかに興味を持った。言語の構造とか、その言語による思考方法とかの話が本当に面白かった。それで、留学したいと思っていたけど、実は大学3年の時に、芸術学や美術史を勉強したくて、転学科をしようかと考えていました。教授に相談したところ、「学部を卒業してから、大学院でやったら?その分野を留学する時に専攻したらよいのでは」と助言を受けていました。それで、とりあえず卒業はしよう、となりました。大学をそのまま卒業して、教員採用試験にも大学4年の時に受かったから、卒業してすぐ、教員になりました。でも、英語をもっとペラペラ喋れるようになりたい、とか、あとアートにずっと興味があって、教員の仕事はそのままずっとやらないだろうとは、なんとなく思っていたんです。そしたら、沖縄県の人材育成財団の留学プログラムで、美術館学芸員の枠を募集しているのを知って、絶対にこのチャンスを逃してはならない!と思って、選考試験を受けました。そしたら合格して、教員の仕事を1年間休職して、留学しました。試験に合格してから、半年ぐらいイギリスの大学院を探して、募集要項を取り寄せたりしながら、TOEFLを受けて、2つの大学院に出願しました。で、その1つに合格することができて、留学が実現できました!」
 
Q「留学準備で苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
A「留学準備では、インターネットがまだ出始めの時代だったので、情報収集は問い合わせと資料郵送だから、時間がかかったことかな。大学院は、ブリティッシュカウンシルからイギリスの大学一覧の資料を送ってもらって、自分で探しました。希望の大学院のTOEFLのスコアが、初めは足りなくて2回受けて、宮古島から受けに行くので、渡航費などお金がかかりました。出願締め切り前にやっと基準のスコアが取れて、なんとか出願が間に合いました。大学はロンドンにあるところ、と絞って探しました。美術館学専攻なので、たくさん美術館博物館がある都市がよかったから。学位が美術専攻ではないので、大学院が入学を認めてくれるか心配だったけど、あとでUCLの大学の教授から聞いた話では、5年間の教員経験というeducational backgroundがstrongだったから、アクセプトした、と聞き、教員の経験が役に立ったなーとしみじみ思いました。」
 
Q「留学中に苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
A「まず、一番は言葉。英語。先生の英語は聞き取れるんだけど、大学の学生や、寮の仲間の英語が、訛りでみんなそれぞれ特徴的で、聞き取れずなかなか慣れなかった。あいまいでも流すことがあって、結局コミュニケーションが取れてなかったりして、恐怖だったし自分が馬鹿に思えて深い挫折感を味わいました。あと、授業のために読む量がハンパなくて、本当に時間がどれだけあっても足りないと思った。しかも、学期の合間、リーディング・ウイークっていうのが1週間与えられて、今後の授業に必要な参考文献リストを渡されて、それがもう100以上あるのですが、それを読んでこいと。それはリストだから、中身は図書館に行って、その本を探して、指定されたタイトルの論文を探して、これをまた何百ページもコピーするわけ。で、図書館には、そういう学生でいっぱいだから、コピー機も待つ。延々とコピーして、持ち帰って読む。で、英語も難しいから読むスピードも遅いし、もうエンドレスだーと。泣きながら読みました。授業は、録音して寮で聞き直したりするんだけど、人の2倍の時間が必要なわけね。で、もう夜遅くまで起きて聞きながらまとめたりしてました。要はやっぱり、勉強がいちばん大変でした。ホームシックとか気候とか文化の違いで誤解とか、そういうのは全然どうでもよいことで、勉強のことが一番大事で、一番大変でした。英語でのディスカッションもついていけなくて取り残されてしまったり、ということもありました。そういう時はとても落ち込むのですが、友達に悩みを話して、留学生どうしではよく食事したり互いに励まし合ったり、ノートを見せてもらったりしてました。あとイギリス人の友達に、外国語でこんなことをやるのは自分には考えられない、留学生はとても頑張ってるから尊敬するよ、と励まされたりして、コースメイト(同じ学科の人たち)にも精神的に助けてもらいました。大学寮に住んでいて、寮には同じフロアに留学生が8人、イギリス人が4人いたのですが、一緒に食事を作ったり食べたり、サッカーを見たり、寮の敷地内にあるクラブハウスにビールを飲みに行ったりして、仲良くなり、提出するエッセイの英語の添削をしてもらったりしていました。しかし同級生の英語を聞くのに苦労していたので、自分の部屋で見て英語に慣れるようテレビを買って、ドラマとかを見て工夫しました。寮の談話室にはテレビあるけど、勉強のために一人で見れるのが必要だった。で、テルテクストという英語字幕を出して、聞き取れないところは字幕を見てました。ストレスアウトしそうな時は、バンドのライブ見に行ったり、みんなでサッカー見たり、演劇見に行ったり、アート見に行ったり、大都市ならではの娯楽を満喫したと思う。1996年は、イギリスでサッカーの「欧州選手権」が開催された年で盛り上がっていて、スポーツを超えたイギリスの豊かなサッカー文化を感じることができたのもよかった。ますますイギリス文化が好きになった。」
 
Q「留学前に不安だったことは?また、実際に留学に行ったら、どうでしたか?」
A「留学前に不安だったことは、やっぱり英語で、セメスターが始まる前に、大学も、プリセッショナル語学研修を4週間入れてくれたのだけど、それを受けてもやっぱり、授業についていくために読む量が多くて苦労しました。でも、そのプリセッショナルで友達ができたのが、よかったです。学期が始まる前の不安も、友達ができたことで気持ちも安心したし、励みになりました。」
 
Q「留学で得たものは何ですか?」
A「まず1つ目は言語面でのアドバンテージ。母国語以外で勉強することでその時は苦労したけど、そこは相当な英語使用の訓練の機会となったと思う。読む、書く、聞く、話す、の鍛錬!辛かったけどね〜。2つ目は、憧れの博物館にたくさん行けて、学芸員の人たちから話を聞けて、日本にいてはわからない、イギリスの長い歴史で育まれた博物館文化や、働き方、組織などプラクティカルなことが学べた!3つ目は、楽観的な考え。苦労したけど、論文審査が通ってマスターが取れたことは本当に嬉しかった!我慢して継続してこそ結果が得られる、という成功体験を得られて、その後仕事で辛くても、あの時よりは、日本語でいい分だけ全然まし!と楽観的に考えられるようになりました!4つ目は、いい友達ができたこと!辛いことも楽しいことも一緒に経験して、精神的につながりの強い友達ができたこと。」
 
Q「留学が帰国後のキャリアや人生にどう影響しましたか?」
A「まず、帰国して半年後に、沖縄県の美術館建設準備のプロジェクト組織に呼ばれて、働く機会を得たこと。当時の沖縄には学芸員に英語が使える人が少なくて、海外とのやりとりは本当に多く、英語使えることがアドバンテージになったので、これは直接のキャリアにつながった。学んだことをすぐ仕事に生かせました。その2年後に、ニューヨークの美術館に1年間インターンシップする機会も得られて、美術館学芸員としてのキャリアにつながりました。美術館建設準備として収蔵品の収集や、保存、展覧会企画などの仕事をしたけど、いよいよ建設が着工という時に、学芸員の仕事をやめることになりました。子どもが生まれて、両立ができなくなったからです。結局7年勤めたあと、また英語の教員に戻りました!それからは、英語の授業に、イギリスでの経験を生かすことができたかな。英語を教えることに厚みが出たのかなと思います。」
 
Q「今後留学を目指す学生へアドバイスをください」
A「留学の目的はいろいろだと思う。日常生活レベルの語学力を身につける語学留学でもいい。これはこれでよいと思います。自分の寛容度や視野を広げる経験に必ずなると思います。でも、純粋に学問をする留学も、もし学びたいことがあるなら、ぜひ!イギリスはミュージアム学問の伝統があって、本当に興味深い学びの経験ができたと思う。何を学ぶかが決まったら、どこで学ぶかもいろいろな点からしっかり考えて、場所を選ぶとよいと思います!」

インタビュー実施日:2018/07/21

インタビューアーからのコメント

「印象に残った言葉」
インタビューを通して、私が特に印象に残った言葉は「我慢して継続してこそ結果が得られる、という成功体験を得られて、その後仕事で辛くても、あの時よりは、日本語でいい分だけ全然まし!と楽観的に考えられるようになりました」という留学で得たものを質問した際の言葉です。

「お話を聞いて、感じたこと、学んだこと」
インタビュー相手の上地太子先生は高校時代の担任の先生だったのですが、身近な人の留学の話をこんなにじっくり聞き出せる機会はなかったのでとても良いきっかけになりました。太子先生の話は、今後自分が留学することになったときや、自分の人生において活かせそうな話ばかりで、留学を通して多くの苦労を乗り越えた先に大きな達成感や自信がつくのだということを学びました。先生が留学したのは1995年で私が生まれる前の話ですが、留学中に仲良くなったロシア人やシンガポール人とは今でも交流があると聞いて、留学中に辛いことを一緒に乗り越えたり、思い出を共有した友達とは何十年経った今でも国を越えて仲良くなれるのだなと感動しました。私が高校時代からずっと尊敬している上地太子先生は留学やその後のキャリアを経て成長し、強くなったのだと知ることができました。そして、留学に行きたいという思いがより強くなりました。

インタビューアー:新吾 彩愛 (経営学部経営学科1学年)
留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。
京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
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