留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

帰ったら負けだ

岸 佳央理氏

2018年2月20日  995ページビュー
1年以上   中国   大学  

「なぜ留学しようと思ったのですか?留学にいたる経緯は?」
大学院生時代、中国史(特に香港史)を専攻していた。ある事象を論証のために行政史料が必要だったが、行政史料を閲覧するには、香港の公文書館に直接赴かなければならなかったので留学をした。
 
「留学準備で苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
所属していた大学と中文大学は交換留学の提携校ではなかったため、大学の留学制度を利用せずに個人留学をしなければならなかった。個人留学を実現させるために、中文大学にアポイントを取って必要な英文書類を作成したり、大使館でビザ取得手続きを取ったり、事務的なことも自力で行わなければならなかった。事務的なことでわからないことは、大学の国際センターに相談して教えてもらった。留学開始後も、授業料や寮費の支払いを巡って先方の事務と意思疎通がうまくいかず、交渉するということが如何に大変か身をもって体感した。
 
「留学中に苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
人とのコミュニケーションに苦労した。校内にある狭いシェアルーム型の寮に入居したが、生活習慣、文化が全く違う人たちと一緒に暮らすことは大変苦痛だった。ルームメイトの行動の中で、自分が不快に感じる行動があったが、最初はそれを彼女に注意しなりせず我慢をしていた。しかし、我慢することがばかばかしくなり自分の気持ちを素直に口にするようにした。その結果、ルームメイトが自分が不快だと感じていた行動を見直してくれた。お互いの理解すべきことと理解しなくてもいいことが分かりストレスがなくなった。
 
「留学前に不安だったことは?また、実際に留学に行ったら、どうでしたか?」
初めての一人暮らしが海外だったため、困ったら誰に相談すればいいのか分からなく、生きていけるかが不安だった。しかし、留学先ではみんな親元を離れていて同じ不安を抱えていた。また友人が家に招待してくれ、友人のお母さんが手料理を振る舞ってくれたり、愛情をたくさん注いでくれたので、大丈夫だった。
 
「留学で得たものは何ですか?」
行動力を身につけられた。留学前は自分から何かを積極的に行動するということをしていなかったが、海外では自分で考え、行動しなくてはならず、何事にも積極的になり、遠慮しすぎなくなった。また、国際的に友達ができた。自分とは異なる環境で育った人と出会い、自分の考え方や視点が広がった。
 
「留学が帰国後のキャリアや人生にどう影響しましたか?」
史料収集という最大の目的を達成でき、無事に博士論文を執筆・提出することができた。また、史料上に記されている文字を追うだけで歴史を平面的に捉えていたが、現地で実際に暮らすことで、町の臭いや人々の気持ちが見え、文字の裏に隠された事象を理解し、歴史を立体的に捉えられるようになった。
 
「今後留学を目指す学生へアドバイスをください」
留学には絶対行った方がいい。今自分のいる世界がどれだけ狭くて、自分の考えや悩みがどれだけ小さいのかが分かる。留学というのは自分の身一つで行かなくてはならず、初めは頼れる人もいない。自分で何とかしないといけないため自分のことをよく見直すこともできるし、相手が自分の言動でどう動くか予測できるようにもなる。他にももちろん、語学やコミュニケーション能力、生活力など基礎能力が向上する。できれば、留学するときは日本人と共に行くべきではない。自分一人で生活する環境を意図的につくらなければ、甘えてしまって得るものも得られないため。留学への期待がある一方で、多くの不安もあると思う。国際センターの方に相談するのもいいし、今日本に来ている留学生に相談してみるも大いに参考になるはず。ぜひ留学という厳しい環境で多くの経験をしてみてください。

インタビュー実施日:2017/06/27

インタビューアーからのコメント

「印象に残った言葉」
「帰ったら負けだ」これは私が、留学で帰りたいと心が折れたときがあるか質問した際の岸さんの言葉である。両親から送ってもらったお菓子を留学生の共有冷蔵庫の中にしまっていたところ、盗まれてしまった。「こんなこと日本では起こりえない。帰りたい。」と涙していたが、だんだん馬鹿らしくなり、「なんでこんなことで私が身を引かなければならないの。ここで帰ったら負けだ。」と思い直し、「返して!泥棒!」と、例の冷蔵庫に貼り紙をした。その結果、お菓子が戻ってきたそうである。このことから身を引かないで主張をすることがどれだけ環境を変え、大切なことであるか、海外だけでなく日本の生活でもこの気持ちは必要だと学んだ。私が留学するときもこの言葉が出てくるようでありたい。

「お話を聞いて、感じたこと、学んだこと」
留学する前の岸さんの不安や環境は今の私とほとんど一緒でとても共感できたので、テンプレートの他にも質問してみた。
Q,留学で帰りたいと心が折れたときがありますか。また、どうやって乗り越えましたか。
A, ※「印象に残った言葉」を参照してください。
Q,なぜ多くの不安があるなか留学ができたのですか。きっかけは何ですか。
A,大学で必死に勉強を頑張っている留学生に現地に行ってないから史料の読解が不十分であると指摘されて、このままでは勉強している意味がないと思い至ったため。
Q,現在、世界情勢が不安定ですが何か危ない経験などしましたか。
A,たまたまデモ隊と警察当局が衝突していたところに出くわしてしまい、催涙弾の残骸が目に入り涙がとまらなかった。
留学について岸さんが話してくれたことは今まで講義で話してくれた方々が口をそろえて言っていたことと同じだった。やはり留学は自分が変わる。多くの困難があるからこそ自分を見つめることができ、将来に活かせる。そういった岸さんの話は共感できる点が多く、今まで不安定な世界情勢もあり短期で行こうと思っていたが、多少のリスクを背負ってでもそのときにしかできない経験を長期留学のなかでしながら、また、様々な人との交流から自分を変えてみたいと思い始めた。留学のビジョンがかなり見えてきた。ぜひ岸さんの「帰ったら負けだ」精神で長期の留学に挑戦したい。

インタビューアー:内野 佑美(東洋大学)
留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。
京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
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