留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

留学することそのものは「ゴール」ではなく、「スタート」

小野 文子氏

2018年2月20日  1,324ページビュー
1年以上   4年以上   イギリス   大学院(博士)  

「なぜ留学しようと思ったのですか?留学にいたる経緯は?」
大学在学中にオックスフォード大学やストラスクライド大学のサマー・スクールに通い、英語を勉強した経験があったことから、イギリスの文化に興味を持ち、イギリス美術について研究したいと思っていました。その頃の日本では、イギリスの美術はあまり研究されていなかったことから、現地で勉強することに意義があると考えましたし、1990年代の日本では、大学はまだ閉鎖的なところがあり、海外の大学で自由に勉強することを選択しました。
 
「留学準備で苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
私が留学した1990年代と現代の違いは、インターネットによる情報量だと思います。ヘアードライヤーからワープロ(最初に留学した1993年頃は、まだワープロを使っていました)、パソコンまで、日常生活や研究をするためにどのようなものが必要なのか、情報を得るのに苦労しました。また、スコットランドについての情報が少なかったことから、ブリティッシュ・カウンシルに行って本を探したり(当時はブリティッシュ・カウンシルの地下に資料室がありました)、スコットランド協会という団体があるのを見つけて、知り合いをつくったりして、情報を提供してもらいました。2度目の留学でようやくe-mailが普及し始めましたが、当時はフォーマルなやり取りは紙媒体での文書が主流だったため、アプリケーションや入学許可についてのやり取り等、とても時間がかかり、心配なことも沢山ありました。ですが、インターネットやe-mailがあまり普及していなかった時代だからこそ、いろいろな人との関わり、助けてもらうことによって留学が実現し、「自分がどのような人になりたいのか」ということを学ぶことができました。
 
「留学中に苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
日本とスコットランドの気候と食べ物の違いに慣れるのに苦労しましたが、「スコットランドを楽しめるのは今だけ」と考えるようにして、楽しむことを心掛けました。スコットランドは治安も良く、のんびりとした地方都市の生活であったことから、危機的な状況や大きな苦労はありませんでした。沢山の友達を作り、私が「異文化で生活している」ことを理解しもらえるように、困ったことや、知らないことは、率直に現地の友人に相談するように努めました。「孤立」しないように、積極的に人と関わることが、大きな危機を招かないコツだと思います。
 
「留学前に不安だったことは?また、実際に留学に行ったら、どうでしたか?」
 「人間が生活しているとことなので、何とかなる」という思いがあり、日本を出発する前に大きな不安はありませんでした。生活面ではそれほど苦労はありませんでしたが、「学生としての有り様」が日本とは全く違うことに、戸惑いました。つまり、日本で大学生だったころには、大学の先生がおっしゃることを丁重に学ばせていただく学生が謙虚で好ましい、と思っていましたが、イギリスでは、何に興味を持っているのか、何を研究したいのか、どのような意見をもっているのか、学生が教員に対してしっかりと伝えることが大切であることを学びました。イギリスでは、主体性のない学びは意味がない、ということを初めて知りました。
 
「留学で得たものは何ですか?」
 努力すること、どんな人にも誠意をもって、丁寧に接すること。そして、いつも心を開いて、自分から積極的に人と関わり、正直であれば、言葉や育った環境が違っても、理解しあえること。そして、イギリスで学んだ最も大切なことは、「個人主義」とは、「自分勝手主義」ではないこと。つまり、「個人主義」とは、自分を認めてほしいと自己主張することではなく、相手を認め、受け入れることだということを学びました。自分とは考え方や意見が違った場合、「興味深く、学ぶべきこと」だという姿勢を相手に対して持てば、その人も自分を受け入れてくれて、よい人間関係を築くことができたことが、留学での大きな成果でした。
 
「留学が帰国後のキャリアや人生にどう影響しましたか?」
 留学の目的が研究であったことから、修士号、博士号をイギリスで取得し、現在はそれを生かして日本の大学で美術史を教え、研究活動を行っています。ですが、留学を経験して学んだことで、現在大学の教員としてもっとも役立っていることは、学生との接し方です。学生が主体的に学び、自分の考えを持つこと、そして大いなる好奇心を持って広い世界で学ぶこと、自分とは違う相手を受け入れることの大切さを、日々学生に伝えています。
 
「今後留学を目指す学生へアドバイスをください」
 広い視野としなやかな心と持って、留学生活を送って下さい。価値観や考え方の違いを楽しみ、そして困難は忍耐力を育てることを信じて、努力して下さい。留学することそのものは「ゴール」ではなく、「スタート」であり、海外での沢山のよい出会いと経験によって、自分がどのような人になりたいのか、どのような人生を送りたいのか、じっくりと考えて下さい。

インタビュー実施日:2017/06/30

インタビューアーからのコメント

インタビュイーはe-mailやインターネットが今よりも発達していなかった時代に留学をしたので、手紙を主として海外と連絡をとっていた。手紙でのやりとりはe-mailを使用するよりも積極性が求められる。また、インタビュイーは、留学中に積極的に友人に話しかけ、「孤立」しないように工夫をしたと述べていた。どちらの事柄も共通して重要なことは、人と人との関わり方を重要視するということだと思った。

「印象に残った言葉」
困ったことや、知らないことは、率直に現地の友人に相談するように努めた。

「お話を聞いて、感じたこと、学んだこと」
インタビュイーが述べていた、「主体性のある学び」とは、海外ではより積極的に研究に取り組むことが求められていることがわかった。日本は、社会や組織に従順であることが模範とされがちであるが、自ら問題意識を持って研究テーマに取り組むことが重要であることを学んだ。インタビュワーも海外留学を検討しているので、「主体性のある学び」を実行していきたいと思った。

インタビューアー:小野竜太 (東洋大学)
留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。
京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
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