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インタビュー

海外経験が、人生観を変えた。

原綾子氏

2017年10月20日  1,666ページビュー
その他  

原綾子さん(AH’S INTERNATIONAL株式会社 代表取締役)
2012年ミス・ユニバース日本代表としてアメリカ・ラスベガスにて行われた世界大会に出場。ミス・ユニバースとしての任務を全うされ、現在ではメイク、ウォーキングなど、女性のセルフプロデュースを助けるための会社を設立し、代表取締役を務めている。
 
原綾子さんに、ご自身の人生観に大きな影響を与えたという、ミス・ユニバース任期中の様々な海外経験についてお話を伺いました。(2017年7月6日実施)
 
――まず、ミス・ユニバースの大会について、お聞かせいただけますか。
ミス・ユニバースの審査は、国内の選考の段階からおよそ一年間かけて行われます。美のオリンピックとも呼ばれますね。およそ90ヶ国から世界中の美しいとされる人が集まります。外見的な美しさだけではなく、スピーチやウォーキングを通じて『知性・感性・人間性・内面・自信』の5項目が審査されるんです。
世界大会のなかで、それぞれの国で一番美しいと言われる女性達とたくさん会いました。文化も言語も違うから、当然美の基準も違います。好まれる細さであったり、肌の焼け具合だったり。自分の正しいと思っていた美が一気に覆されました。自分が育ってきた環境で、正しいとか、自然であるとされてきたことが通用するのは、自分の国の中だけでのことだったんだなあと。それまで私の中にあった様々な固定概念というものが消え去りましたね。
 
――その経験から、ご自分に変化したことはありますか。
思考を固めることの危険性を知りました。信念を持つことは大事ですが、本当の意味で世界にそれが通用するのかということを見直すきっかけになりました。例えば、歩き方ひとつとっても、日本人は肩幅も狭いし、足も短いし、昔は着物の国だったから摺り足が美しかったんです。でも、ミス・ユニバースの大会だと高いヒールで、脚を大きく上げて歩かなくちゃいけない。文化が違うんですよね。盲目的になってはダメです。だから、私達が持っているアイデンティティとしての自分の文化と、これから実際に世界に飛び立つ時のワールドワイドな感覚とをどう折り合いをつけていくか、自分で考えなきゃいけないんです。どう生きていきたいかということを実感しましたし、アイデンティティとして日本人であることも自覚しました。
 
―カルチャーショックを受けた出来事はありますか。
そうですね、自分がやはり日本人としての感覚に縛られていることを痛感しました。もともと、私は人の目なんて気にしてない!と思っていたんですが、全然そんなことはありませんでした。ミス・ユニバースの1ヶ月の審査中の出来事なんですが、隣の部屋の代表の子が朝っぱらから大声で歌を歌う子だったんですよ。それも4時半ころから。日本だと、周りの迷惑になるから、皆まだ寝てるから…ってどうしても人目が気になりますよね。思いやりと言えばそうなのですが、一方で私は我が道を行くその生き方に衝撃を受け、かっこいい!うらやましい!と思いました。
 
-―語学の勉強はどのようにされたのですか。
私は、教室に通ったりはせず、体験型で学びました。東京には海外の方がたくさんいるので、英語が聞こえてきたら、突撃していって、Hello!!って話しかけにいきましたね。全然喋れないけど挑戦して、いっぱい恥をかいてスピーキング力を高めていきました。とにかく自分にあった方法を見つけることが大事です。視覚的に定型文を暗記するのが得意な人ならそうするのが一番ですし、自分についてよく知って、効率的な方法を探すべきですね。
 
――海外経験が、ご自身に与えた影響は何だと思われますか。
自分が良いと感じる事柄の、反対側の価値を知ることができたことです。私が悪いと
思うことは誰かにとっての良いことかもしれないんです。その善悪などの判断をしているのは他でもない自分です。だから、誰かの意見を否定することがなくなりましたし、人間としての器が大きく広がりました。一人一人の人格を、思っていることを知ろうと努力して、対話するようになりました。これも、ミス・ユニバースの世界大会の経験を経て、『美』を通じてありとあらゆる文化的な違いや価値観の差に触れることができたからです。
 
――一番印象に残った出来事は何ですか。
任期中に訪れた、クロアチアでの出来事です。旅番組のロケ中にあるおばあさんと出会ったんですが、その方の一言が私の人生観を変えましたね。その方は、おばあちゃんが一度畳んでしまった、玩具みたいに可愛いお菓子を売っているお店を再建されたんですが、『自分が良いと思ったことを継承したい』とおっしゃったんです。何て利己的かつ利他的な考えだろう、と衝撃を受けました。何かを未来に継承したい、伝えたい、という気持ちに心を打たれて、私も日本人としてその文化を今こそ見せるべきだと思いました。そこで着物を着てその方に見せたら、涙を流して感激してくださって。これが本当の国際交流なんだな、と実感した素晴らしい空間でした。文化的な交流をするうえでは、やはり自分の文化に誇りを持つこと、継承したいんだという気持ちが必要ですね。得意・好きなことに真剣に取り組んでいる人こそ、海外で質の高い国際交流ができるんじゃないかと思います。
 
――ジェンダーや『美』などの世界の現状を、日本女性と比較してどう思われますか。
海外ではセクシャリティですとか、そういうのを一人の人間が持つ感覚として尊重する流れが進んでいます。日本は、いわゆる先進国と呼ばれる国のなかでもジェンダーイコーリティや女性の社会進出は確かに遅れていますね。やはりそれぞれの文化があるので良い悪いではないんですが、同性婚が法律で認められていなかったり、実情として整備が遅れている現実を実感しました。また、『美』についてですが、海外の女性は自信があって、自分の美を表現されています。日本女性は、アウトプットをしない。足並みを揃える国民性と言いますか、雑誌のままのスタイルだったり、『美』にたいする素直な気持ちを出せていないんじゃないかと思いますね。
 
――原さんは現在、カンボジアで支援を行われるなど海外で活動される一方、地元宮城県女川町でファッションショーを行っていらっしゃいます。グローバルと地域に根ざした活動を含め、今後のビジョンなどお聞かせください。
カンボジアでの支援ですが、必要なものを必要としている人に届けられる存在でありたいという思いから行っています。だからもし、カンボジアの女の子がミス・ユニバースに挑戦したいって言ったら、お金は関係なしにそのスキルをレクチャーします。日本ではレッスン料をいただきますけど。カンボジアって、日本と真逆な国なんですよ。お金やものが日本に比べて貧しいところにいる人達が、どんな感覚を持っているのか、それが知りたくて自分で子供達と実際に触れ合って、自分に何ができるかということを考えています。
一方、女川町のファッションショーは、きっかけは3.11の震災ですね。当時私は東京でミス・ユニバースになるための挑戦をしていて、宮城に帰ってきて地元の、復興のための力になりたいという思いと、私ができることはほとんど何もないんじゃないかという思いがありました。そして、私が今するべきことは、美を通じて日本一になり、適正な助けができる力を身につけることだという結論になりました。現在、人はどうやって絶望の中から希望を見出すのか、再生していくのかということを表現する場としてショーを行っています。つまり、私自身の社会的存在や意義を社会に還元してるんですね。グローバルな人というのは、単に海外で活躍するとかじゃなくて、場所に関わらず世界のために自分にできることをきちんとする人であると思います。
だから、海外に行けばいいっていうものではなく、夢や目標を達成したそのあとに社会とどう関わっていくのか、というところまで海外で学ぶ皆には考えてほしいですね。例えば支援だって、今現状で、できることというのはあふれています。私は『美』を通して、一人一人の女性が「自分に対しての誇り」を持って輝ける社会創りをしていきます。
 
――ありがとうございました。

インタビュー実施日:2017/07/06

インタビューアーからのコメント

インタビューアー:風間款(東北大学文学部人文社会学科1年)
留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。
京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
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