留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

やってみたら、何か得られる!

大石佳能子氏

2017年10月20日  876ページビュー
アメリカ合衆国   その他  

今回、私は石田さんと一緒に、株式会社メディヴァの代表取締役でいらっしゃる大石佳能子さんにインタビューしました。伺った質問、大石さんの答えを中心に、自分の感じたこと、考えを含めて書いていきます。
 
○ ビジネススクールに、そして日本でもなく、ハーバード大学に入学した理由
「私は男女雇用機会均等法の少し前に会社に入ったため、会社に入っても、女性は男性と同じではなく、女性は大学を出ていても一般職扱いで、自分はもう少し仕事をしたいなと思っていた。日本生命に勤めていて、2年目から男女雇用機会均等法が始まり、会社側も色々考えてくれていたが、もっと面白い仕事をしたいなと思っていた。そのところ、ビジネススクールというものがあるから行ってみてはどうだと勧められ、アプライしてみようと思ったら、受かり、行きたい気持ちもあったため、少し軽い気持ちで行った。」
「当時ビジネススクールは有名でもなく、行こうと思えば海外しかなく、グローバルな仕事をしたいと思っていたので、それなら海外が良いかなと思い、ハーバードに行った。」
「アメリカにビジネススクールはいっぱいあるが、トップテンというのがあって、その上から5、6校に願書を出し、すごくハーバードに行きたかったというよりは、端から願書を出し、ハーバードから来ても良いよと、他の学校からもあり、そこから選んだという感じ。西海岸と東海岸は雰囲気が違い、東に行きたいと思い、ハーバードに通ったし、それで良いかなと思った。」
 
● 4年生大学を卒業する女性の数でさえ現在より少なかった時代に、日本にはビジネススクールが少なかったことから、海外の学校に通おうと決意するのは勇気のいる素晴らしいことだと思いました。就職した後に自分のできる仕事の幅を広げるために行動するのはとても重要なことなのだと改めて感じました。レベルよりもどのような環境の大学で学びたいか考えていこうと思いました。
 
○ 大学生時代、留学は考えるような時代ではなかった
「大阪大学の法学部を出て、日本生命に勤め、その後ハーバードのビジネススクールに行った。今から考えたら弁護士などをやっても良かったかなとは思うが、その当時はあまり思わなかった。」
「私たちの頃は、今文科省も海外に行きましょうという感じだが、留学しましょうという感じは全然なかったので、留学する人は0だったし、たぶん学校もそれを単位に認めるということもなかったし、特段環境もそのような感じではなかったので、周りも私も大学のうちは考えていなかった。たぶん今の時代だったらきっと行ったと思うが。」
 
●今、法学部にいながらも、どのようなことを留学先で学びたいか、そして卒業後どのような仕事をしたいか何も決めていない私は、専門にとらわれず、学びたいと思うことを学びたいと思う時にやれば、自分が仕事としてしたいことがきっと見つかるのではないか、だから今は焦らなくて良いのだと思わされました。これから少しずつ考え、留学に行って勉強したいことを探していきます。
 
○ ビジネススクールでの生活で、苦労したこと、住んでいた場所
「言葉がわからないのと、ビジネスはそれぞれの国の社会環境や状況によって違うため、contextがわからない、そして山のように勉強しなくてはいけなく、いろんな意味で大変だった。」
「現地の生徒たちが入る寮に一緒に入っていた。住むパターンは3つあり、1つは寮に入る、2つ目は近隣でどこかに家を借りて住む、あともう1つは家族寮のようなものがオンキャンパスにありそこに住む。私は独身で行き、キャンパスの外に住むと、ボストンはすごく雪が降るため、大学にたどり着けないことがあるので、オンキャンパスにしたいと思い、寮にした。」
「ご飯が美味しくない。アメリカは毎日ピザだったり、ブロッコリーも茹でずにそのままサラダに生で出てきたりとか、寮に他の学生の彼氏が泊まりに来て、シャワーに普通に男性がいることもあった。ハーバードは世界中から学生を集めているということで、グローバルネットワークを作っているというのが、1つの売りなので、アラブの王族の子やフィリピンのバナナ農園の子、コロンビアの宝石財閥の子などがいて、文化的なショックも受けた。」
 
●さまざまな国から来た人々と出会い、日本人とは違った文化、習慣に触れながらも、適応し、そしてそのうえ英語で専門的な難しい勉強をするというのは、留学に行かなければ体験しないことだと思います。
 
○ ビジネススクールでの体験で、日本との違い、その後生かされていること
「私は、ビジネススクールに行った後、マッキンゼーに入り、その後今の会社を起こしたが、原点はビジネススクールにあり、その時ビジネスを学んだというのが1つと、あともう1つは、ハーバードは少し特殊で、講義ではなく、 このような企業があってというストーリーを分厚い冊子で読まされ、それを自分で分析し、突然、これをあなたはどう思いますかというように当たるというケーススタディーを行なっていた。それを1日に3ケース行い、とても大変で、当然準備もできていない状況で、いきなりパッと当てられたら、当てられた以上はケースオープンと言われる、その場を仕切り、話をしなくてはならず、とっさにその場を仕切ることや、何もできていなくても、何とかするという、勉強以外のとっさの瞬発力を得た。それは、マッキンゼーに行って、コンサルタントをした時も、今社長業をしている時も結構役に立っている。あとは、当然グローバルなネットワークや語学なども、ビジネスのことをきちんと書いたり、話したりする力を学んだ。学びというのと、根性というか、その場の瞬発力とでいうと、後者の方が、何十年か経った今、行きているような気がする。100人ぐらいの全然知らない人がいる前で、準備もしていないままパッと当てられても、とりあえずその場を仕切らなくてはいけない力というのは、あまり日本の学校ではやらない。そのような底力がすごく生きている感じがする。」
「やはり、日本の大学は座学と知識の積み重ねのようなものだったのが、世の中それだけではないのだと、それだけでは生きていけないのだという感じだね。」
 
●英語で専門的な話を読み、そしてそれを十分な準備期間のない中で、大勢の外国人の前でまとめたり、話を進めたりするということは、難しいことであり、今の私には到底できないなと感じました。それを二年間に及んで経験し、訓練しているからこそ、現在のお仕事に生かされているのだと思います。自信を持ち、人前で専門的なことを英語で話すというのは、留学の時も重要であり、グローバルに働くには不可欠な能力だと考えているので、大学内でのプレゼンも含めた小さな機会を使って、自分も鍛えたいと思います。いかに人が聞きたいと思う話を的確に伝わるようにできるかは、実戦でのみ身につくと考えています。多国籍の人々が集まるハーバードのビジネススクールで得たネットワークはさぞ大きく、仕事をするうえでさまざまな情報を共有でき、役に立つのだろうと感じました。世界とつながりができるのも留学の素晴らしい点だと思います。
 
○ ビジネススクールの授業料
「自分で一部出し、少し奨学金をもらい、マッキンゼーのサマーインターンで働いて少し稼ぎ、内定をもらった時に前借りさせてあげると言われ、前借りをし、あと親が少しくれて、少しずつつないで出した。2年間生活費を入れて、当時で千何百万ぐらいした。今はもっとするのではないかな、でも今はもっと奨学金制度が充実しているので。私が行った当時は外国人奨学金が出なかったので、少し特殊な奨学金を日本からもらったのだが、今は外国人にも奨学金が出る。貸与だけではなく、給与のもあるので。私はハーバードビジネススクールのジャパンコミュニティーの、皆さんハーバードに留学しましょうよというのをやっている係なので、言っているが、奨学金あるので是非皆さん行ってほしい。」
 
●奨学金が充実していない中で、自身で方法を見つけるのは大変だっただろうと考えると、今たくさん奨学金制度があるので、以前よりはるかに行きやすくなったではないかと改めて感じました。このようなチャンスを使わないのは本当にもったいないなと思うので、私もたくさんの人に留学に行ってほしいと強く思います。
 
○ ビジネススクールを出た後に就職されたマッキンゼー、そこでの仕事
「ビジネススクールを出たことで優遇されるというか、MBA、MSでも良いが、持っていないと中途採用で入れなかった。一番多いパターンは、ビジネススクールに入ってマッキンゼーに入るという感じだった。持っていないと採用の土俵に上がれなかった。日本の大学院から直接入る人ももちろんいたが、海外だったらビジネススクールに入って、マッキンゼーに来る人が多かったという感じ。」
「今、楽天やグーグルもそうだが、一応公用語は英語、とは言いつつ、普通会社内は日本語で、公式文書、社内文書などは全部英語だった。」
 
●現在は海外に関係する仕事をしたい場合、修士号以上を持っていないと応募条件にさえ届かないことがほとんどだと聞いたので、自分も何か学びたいことで修士号を取りたいと考えています。コンサルトについてのことが英語で書かれているのだと思うと、難しそうだなと感じますが、ビジネススクールでは全て英語でやってきたことを考えると、たいしたことではないのかと、やはり英語で専門的なことを学んでおくというのは、どこで働くにせよこれからのグローバル社会において、必要になってくるのだと感じました。
 
○ マッキンゼー勤務時に独立を考えた理由
「独立の理由は、アキミネ君(息子さん)が生まれ、2つあって、1つ目はあまり医療に興味がなかったが、子供を産むために病院にかかるようになり、もう少しどうにかならないのかと思ったことと、もう1つは、子供を抱えて働くということになると、マッキンゼーは外資なので割とフレキシブルだが、とは言え、自分の勝手で全部を決められない。自分で会社を起こした方が自分でしたいと思ったら、そのように仕組みを作れば良いし、周りも社長のわがままは放っておいてくれる感じがあったので、その2つがきっかけだね。」
 
●自分が実際に体験し、疑問に思ったことについて仕事として関わるというのは、本当に世の中を良くしていきたいという思いがあるからこそではないかと思い、このような方々のおかげで、改善されていくのだなと感じました。おっしゃっていたように、変わってきてはいますが、現在でも女性は出産すると、男性と比べるとやはり働きにくい環境です。その中で独立を選択されるのは、とても効率的なことだと思うとともに、それだけ能力があり、認められていて、さらに強くないとできないことだなと刺激を受けました。人に信頼される働き方ができる人間になりたいです。
 
○ 現在の仕事、発展途上国の医療について
「海外出張はよく行く。今やっているメディヴァという会社が、日本の医療と介護を海外に持っていくというのを国の政策でしようとしていて、それの支援をやっていて、ベトナムや中国、ミャンマー、ロシア、サウジアラビアなどで医療の仕組みを作る、検診センターや病院の運営をする仕事をやっているので、来週も天津で、自社の介護施設がオープンするので、その式に行ったり、ベトナム行ったりとか結構している。それはあまりハーバードとは直接関係ないが、大元を辿ると、ビジネススクールに行かなければ、マッキンゼーに入ってないし、マッキンゼーに行かなければ、メディヴァはなかったし、というように、なるから。」
「今発展途上国では、感染症と生活習慣病が同時に来ているのよね。日本ははしかのような感染症を医療で抑え込めた後に、国が豊かになって生活習慣病が出て来た。発展途上国ではこれが同時に起こってしまっている。貧困層は、まだ感染症の問題があって、でも中旬以上の人はすごく栄養もいっぱい摂り、少しお金があると車を買い、運動もしないので、生活習慣病になっていて、心筋梗塞や糖尿病、癌が多いという2つの問題が起こっている。解決するのがとても難しくなっている。JAICA、ODAなどは主に感染症対策をしていて、生活習慣病は放って置かれている感じなので、そこを民間が入ってやっているという感じ。制度設計、それにかかるお金を誰が負担するか、制度があっても、それに対応する検診機関や予防する仕組み、悪くなってしまった時に治療する方法などがなかったら意味がないので、そのような体制をそれぞれの国で作っている。」
 
●日本とは異なる状況に直面し、国や組織がやりきれていない取り組みについて支援するというのは、独立を考えた時と同じく、疑問に思い、改善したいという強い気持ちが伝わってきて、たくさんの人々のために目的をもって、仕事をする人は素敵だなと思いました。
 
○ 留学しようとしている、またはする学生へのメッセージ
「たぶん、行ったら何があるかよりも、行ってみたら何か予想もしなかった扉が開けることがあると思うので、あまり難しく考えず、半年、1年、3・4年など行くことが投資対効果で合うかどうかみんな悩むと思うが、飛び込んでみると、必ず新しいものが見えると思うので、ぜひ行ってみてもらえると良いなと思う。私も実際行く時、そんなにすんなり決まったわけではなく、お金もかかるし、全員が卒業できるわけではないので、本当に行って良いのだろうかと悩み、先輩の話とかも聞いてみたら、「大丈夫よ、借金なんて返せるから」と言われ、じゃ行こうかと思い、行った。あまり難しく考えず、とりあえずやってみると、割と新しく見える世界はあるので、ぜひ切り込んでほしいなと思う。あと私を含めて留学したことのある先輩たちは後輩たちに対してサポートしたいと思っているので、これ困ってますや、これどうすれば良いですか、誰々と繋いでほしいなど、このようなことを言ってくれれば、当然私は、全部は知らないし、全部知っている友達もいるわけではないが、みんなに聞いて回ると誰かがサポートしてくれるので、積極的に手を差し伸べて、それなりに皆助けてくれると思う。だからもっと気軽に考えれば良いのではと思う。みんな思うのは、ここで一年間行って、単位にならなかったとすると、一年卒業するのが遅れるとか、就職がどうとか色々考えると思うが、私の歳になって言えるのだが、そんなこと関係ないから、一年など。やってみて積んだものの方が1、2年遅れることより、結構価値があると思う。無目的でチャラチャラと旅行気分で行ったらそれは意味がないけど、それなりにやりたいことがあって、それはすごく明確ではなくて良いのだが、漠然でも良いから何かやりたいことがあって行くのであれば、投資対効果は合うなと思う。考えすぎず、躊躇せず飛び込んでほしいというのがまず伝えたいこと。目的も、すごく明確でなくてはいけないと思うとしんどいと思うので、私も具体的に自分の将来を描いて、ハーバードに行ったわけではなく、日本にずっといるのか、何かよくわからないけどここで行った方が面白い世界が見えるなと思って、行ったので、本当にその程度で構わないという感じ。」
「留学で得たことが多いということを伝えて、もっと留学したい人が増えると良いなと思う。何のために行くかわからなくても、何らかの意志があれば、何かは掴んで帰って来ることができると思うので。」
 
●明確な目的がなくても、それなりにやりたいことがあって、留学に行けば、何かは必ず得られ、それは1,2年卒業が遅れることよりも、価値があるというのが一番印象に残りました。大石さんのような素晴らしいキャリアを歩んでいらっしゃる方が言うのですから、日本で働こうと思っていたとしても、一度一人で海外に長期滞在し、日本語以外で学ぶというのは、自信につながり、その後の人生にもきっと役に立つと確信しています。留学に行かれた先輩方によって、私たちが留学しに行きやすくなっているので、今回のインタビューのように体験談を聞き、相談し、自分の留学にも役立てたいと考えています。
 
○ 英語圏以外に留学することについて
「良いと思うが、海外で学ぶというのは、3分の1が授業で、3分の1が周りの環境で、残りの3分の1は単にそこにいることという感じなので、そこでその語学がわからなかったら、授業は分かったとしても、残りの3分の2、少し損はするかもしれない。多少できるなら問題ないが。」
 
●私は英語圏に住んでいた経験から、英語以外の言語を学習し、留学では非英語圏の国に行きたいと考えていたが、どの国にどの言語で留学するかではなく、自分が学びたいことを、日本語、日本人に頼らずにやることに意味があるのだと、インタビュー全体を通して感じました。英語はこれからの世界で生きていくためにもちろん必要ですが、あくまで手段であり、それで何を学び、何を伝え、何に取り組んでいきたいのか考えることのほうがもっと重要だと気付かされました。

インタビューアーからのコメント

今回大変貴重なお話を聞くことができ、これからの大学生活、留学計画、そしてその後の進路、仕事について深く考えるとても良い機会になりました。いろいろな制度が整っていて、留学しやすい今だからこそ、自分の興味のあることを、海外で多様な人々に囲まれて他言語で学ぶということを、人生でせめて一度くらいはしてみるべきだと改めて思いました。考えすぎずに、やってみたらきっと何か自分の財産、力になるものを得られる気がします。このような留学体験談をたくさんの学生が聞いたり、知ったりすれば、もっと日本の大学生が外向きになるのではないかと思います。授業を通して、インタビューをすることができ、本当に良かったです。

インタビューアー:武田真穂(東北大学法学部法学科1年)
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京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
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