インタビュー
途上国の現状や自分の経験を若い人たちに
辻󠄀 貴行氏
2017年10月20日 339ページビュー ブラジル 大学院(修士)【インタビューイー】辻󠄀 貴行さん
社会人になってから留学をし、今はJICA専門嘱託職員として、草の根技術協力事業に携わっている辻󠄀貴行さんにお話を伺いました。
〈現在の仕事について〉
辻󠄀さんが携わっている草の根技術協力事業は、NGOや自治体、大学などがこれまでに培ってきた経験や技術を活かして企画した途上国への協力活動をJICAが支援し、共同で実施する事業です。普段は、途上国でNGOや自治体がプロジェクトを作る時に、JICAに事業を提案する企画書の相談、審査をしています。現地の人たちがそのプロジェクトに興味を持ってくれて、現地の生活に直接役に立つかどうか評価するには、現地の人ともコンタクトを取らなければなりません。プロジェクト自体は3年ですが、企画書を作るには約半年から1年かかります。また、辻󠄀さんは、環境保全の分野を得意としていますが、環境保全のほかにも、保健衛生や下水道関係などプロジェクトの分野も様々であり、それぞれ柔軟に対応します。
〈現在の仕事のきっかけとなった出来事〉
大学生時代に所属していた探検部で、外国に行き探検旅行をしたり、現地を調査したことが海外に興味を持つきかっけになりました。大学2年生でモンゴルを自転車旅行、4年生の時にはソロモン諸島で戦績跡調査など様々な国に行ったそうです。食料は自分たちで調達し、テントでの生活。4年生の時には、大学を休学しなければならないほど探検部の活動が忙しかったそうです。その中で、現地の人とコミュニケーションを取っているうちに、自然と外国で仕事をしたり、活動することが面白そうだと思ったそうです。また、楽しいことだけでなく、現地で体調を崩して入院した時に医療の遅れや生活物資の不足を実感したこともその後、発展途上国で働こうというきっかけとなりました。そこで、環境保全に興味を持ち、大学卒業後マングローブを植える活動をしていたNGOに就職し、エクアドルに8年間、その後ブラジルに3年間勤務しました。その時は、今とは逆にJICAの支援を受けていました。NGOでのプロジェクトがひと段落した後、マングローブの研究をするためにブラジルの大学院に留学します。34歳で院に留学し、今まで自分が携わったマングローブに関する活動をまとめたり、荒れ地に植えたマングローブの成長過程などの研究をし、修士をとりました。そのあと、現在の仕事につきました。
〈言葉について〉
アジア圏から南米など様々な国で仕事をしてきた中で言葉はどう対処してきたのでしょうか。もちろん英語は必須で、ベトナムやミャンマー、インドなどでは、基本は英語を使いました。しかし、現場で必ずしも英語が通じるわけではないため、英語だけではなく、現地の言葉も話せなければなりません。しかも、現場では日本人は辻󠄀さん一人。そのため、最初のうちは語学学校に通いながら、エクアドルではスペイン語、ブラジルではポルトガル語を習得しました。辻󠄀さんは外国語を話せるのはなにもすごいことではなくて、住めばできるようになる、と言っていたのが印象的でした。
インタビューアーからのコメント
⋆印象に残った世界とつながるキーワード
・留学が必ずしも正解ではない
・海外に興味を持つ切り口は人それぞれ
⋆学んだこと、感じたこと
大学時代に探検部として様々な国に行かれ、そこで他ではできないような生活を経験されていて、お話を聞いていてとても楽しかったです。留学という形ではなくても世界を知ることはできるということが辻󠄀さんのお話の中で一番印象に残りました。原点が、大学時代に熱中したこと、探検部。自分の好きなことに打ち込んで、その中で自分のやりたいことを見つけることはとてもすばらしいと思いました。この大学生活を自分にしかない、自分にしかできないものにしたいと改めて思いました。自分が熱中できることを見つけるためにも、これからいろいろなことに挑戦していきたいと思います。
インタビューアー:工藤彩乃 (東北大学文学部人文社会学科1年)