インタビュー
「郷に入っては郷に従え」
山中麻理子氏
2016年11月11日 554ページビュー イギリス 大学院(修士)現在、第8回札幌アジア冬季競技大会組織委員会に所属されている山中麻理子さんにインタビューをしました。
山中さんはイギリスのエセックス大学の修士課程で応用言語学(英語について文法や構造、音声、習得過程などを分析する学問)を専攻されました。勉強を進めていくうちに英語の教え方についても興味を持ち、一度日本に帰国してから再度留学をし、その後イギリスのレディング大学の修士課程でTEFL(英語を外国語として教える方法)を専攻されました。
(学生)なぜ留学しようと思ったのですか?きっかけなどあれば教えてください。
人生において、一度日本以外の国での生活を体験してみたかったからです。
(学生)留学中に戸惑うことはありましたか?それらをどのように解決していきましたか?
留学中、寮では中国、韓国、ヨルダン、ギリシャ、ペルーからの留学生と同じフロアで、1つのキッチンを共有する生活でした。食べるもの、食べる時間、調理法、食べ方、食器の洗い方などみんなそれぞれ違うことに戸惑いました。アジアと非アジア圏では、特に食文化が違いました。中国、韓国の食べ物の匂いがきつく、食べ方などについて非アジア圏の人たちから批判があり、私は年上でフロアリーダーであったためよく仲裁役に入りました。
留学地がイギリスで、非アジア圏ということで、アジア圏の学生が「配慮」することが多かったです。食は一日三回毎日のことなのでとても重要な問題でした。
(学生)大学の寮で一番印象に残っていることや、大変だったことはなんですか?
いろいろな国の人たちの「ステレオタイプ」を使ったジョークが沢山あり、話題になっていました。その中のひとつに「沈没船ジョーク」があります。このジョークについて少し紹介しておきます。
世界各国の人々が乗った豪華客船が沈没しかかっている状況から始まります。しかし、乗客の数に比べ脱出ボートが足りないため、その船の船長は乗客を海に飛び込ませようとします。このとき、船長が各国の人々を飛び込ませるために放った言葉は何でしょうか?というものです。
「沈没船ジョーク」は、各国の国民性を端的に表したジョークの1つで、よく話題になっていたようです。(たとえば、アメリカ人に対しては「飛び込めばヒーローになれますよ」、イギリス人には、「紳士はこういうときに海に飛び込むものです」、日本人には、「みなさんはもう飛び込みましたよ」と言うなど)
また、日本人は笑顔でいることが多いですが「常に」笑顔でいることが必ずしもいいことではない、と考えるようになりました。「悲しいときも笑顔で乗り切ろう」という考え方もあるかもしれませんが、悲しいときは悲しむ、怒りたいは怒ることも大切だと思うようになりました。
場合によっては、なぜこんな状況で笑っていられるのかと捉えられることもあり、笑顔には気を付けなければならないと思うときが結構ありました。ただ、笑顔を作る習慣を変えるのは随分時間がかかりました。
(学生)海外と日本の生活の違いはありますか?
自分の発言や考え方が、日本人の代表例になるのでうかつに意見を言えませんでした。
1つの出来事について、良いことなのか悪いことなのか、またどうしてそう考えるのか、といことをきちんと口で説明できないと、何も考えていない人だと判断されてしまいます。
(学生)留学中はどんなことを目標にし、達成に向け意識していたことはありますか?
大学院で勉強していたので、まずは修士号を取ることを目標にし、毎日とにかく勉強しました。たぶん人生においてあんなに勉強したことは、後にも先にもないと思います。ただ、今振り返ってみると印象に残っているのは、勉強以外のことばかりです。
(学生)留学で学んだことは現在どのように生かされていますか?
自分と違う環境に育ち、全く考え方の違う人達と共同生活を送ることで、なぜその人が自分と違う考え方になったのかをよく知ることができ、それを尊重できるようになりました。いまの職場でも、違う考え方を、まず理解して、そこからどう折り合いをつけていくか考えています。
学生)最後に留学することのおすすめポイントを教えてください。
言葉や文化が違う外国は、最初は決して居心地はよくないかも知れません。また、ストレスも多いかも知れませんが、それに慣れ克服し生活できるようになることで、自分に自信がつくと思います。
インタビュー実施日:2016/07/02
インタビューアーからのコメント
●印象に残った世界とつながるキーワード
・「郷に入っては郷に従え」
・笑顔を作る習慣を変える
・自分の発言や考え方が、日本人の代表例になる
●お話を聞いて、感じたこと、学んだこと、今の自分と繋げて思うこと
私もよく笑顔で乗り切ろうとしますが、海外では無礼だと捉えられることもあるというお話を聞いて、気を付けなければならないと感じました。また、自分の発言や考え方が日本人の代表例となるということでは、自分の言葉に責任を持たなければなりません。私は自分の意見を言うことを躊躇するときがありますが、これでは何も考えていない人間だと判断されてしまうかも知れないのでしっかり自分の考えを発言できるようになりたいです。
色々な国の人たちと共同生活を送り、異文化に直に触れるというのは留学でしか体験できないことだと思います。山中さんのお話を聞いて、異文化に触れることで、自分の視野を広げることができると思いました。「郷に入っては郷に従え」という厳しい経験も含めて自分が成長するチャンスを与えてくれると思います。山中さんのように向上心を持ち、違いを受け入れ、多様性を大切にしていきたいです。
インタビューアー:成田 まどか(東洋大学国際地域学部国際地域学科1年)