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Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

スウェーデンへの留学

勝野友仁氏

2016年11月11日  845ページビュー
スウェーデン   大学  

【インタビューゲスト】勝野友仁さん
            (株式会社オーティーシー 教務部)

勝野様は2006年時在学中に志望していた高福祉高負担国家の知見や教育観を得るために留学。帰国後の教育キャリアに思想的影響を与える。
 
1.何故スウェーデンへ?
関西外国語大学に在学、日本一の海外提携校として多彩な選択権があった。
その中で勝野様は教育、ジェンダー、福祉に興味があり北欧を選択。
留学先での授業のマッチを感じスウェーデンへ留学。
(明確な目的意識を持ち、選択権を活かして留学をなさっているのがわかる。実際に2の福祉に関した質問で具体的なお答えを頂いた。)(筆者)
 
2.高福祉高負荷国家のスウェーデンについて行ってどう思うか?
社会福祉で人が社会に参入しやすくなることに私は、(貧困の再生産の食い止めや教育の機会平等という観点から)肯定的であるという意見を先に述べた。日本に生活保護(ベーシックインカムは、一定支給される。生活保護は働くだけ減る)はあるがそれのみにとどまるのは疑問を感じる。と勝野さんに述べた。(筆者)

(勝野様)
最初からわかってはいたが、税金は国民へと還元されるので、観光客や留学生は税負担に関して非常に高く感じた。
ゆりかごから墓場までをスローガンにしているとおり、生活・医療・教育は保障されているという面では安心できる。特に学校面では重要であり、教育に関しては貧困の再生産を食い止め、教育による参画の機会が生まれることが重要であると感じた。
(ここで話が今在住している大阪府へと移る)大阪府下では小学校から高校まで無償可(所得制限有)であるため、選択の幅が広がっている。幼稚園も大阪市では一部無償化になっている。
(話が戻り)給料がスウェーデンでは、税金が引かれて半分になってしまうが結果的には得という認識である。
(昨今のテロ事件に言及しながら)かねてより移民や多民族との共生を行ってきたスウェーデンであるが、留学前に移民の受入については元々賛否両論であることを知り、実際に行ってみて移民への拒否感を直接自分の目で確かめたいと思った。行ってみてわかったのは、やはり移民への拒否感を持つ生粋のスウェーデン人もいる(高負担の税が他民族に使われるのが拒否感を生むという意味で)。背景としては、移民の方は言語の壁もあり仕事にもすぐにつけないことが多く労働力として見られないこともある。
しかし、スウェーデンのすごいところは移民をすぐ自国で教育させるところで、スウェーデン語を習わせるのは無償。子どもも手厚く教育させる。
留学時には出会ったどの移民の方も流暢にスウェーデン語を話していて衝撃を受けた。
(ここで留学するにあたり目的意識が大切だということを言及、そうでなければ「遊学」になってしまうため)
 
3.背番号コードを1947年から導入したとのことですが、日本のマイナンバー制度導入に際してどう思うか?
(勝野様)
あまり聞いたことがなく、向こうでは喋る機会はなかった。
ただ、個人情報の管理は厳しいという認識。また、ITが進んでおり、スカイプも最初はスウェーデン人学生が作ったと聞いた。向こうは政治に関心がある。特に学生や若年層にも選挙意識が非常に高い。
政治家もマニフェストを分かりやすくしている。日本には少ない政治新聞が向こうにはあり、大学内にも無料の政治新聞が設置されていた。スウェーデンは幼少の時より自分の意見を形成することが求められる。 
 
4.宗教に関して
(事前のメールで国家神道の形成と敗戦による否定、戦後のオウムのテロ行為による日本人の独自の拒否感について私が言及。)
向こうはルーテル教会(プロテスタント)、つまり国教があるがそれを見て(今の宗教に拒否感のある)日本に宗教の必要性を感じるか?

(勝野様)
向こうも無神論が45%。ただ、教会が数多くある。移民(特に中東からが多い)もくるためイスラム教のモスクもある。宗教を知らない日本人とは違って、スウェーデンでは、宗教について知った上で無神論を選択している人が多いとわかった。日本でも最近は、イスラム教に関する関心が高まっており、イスラム圏の人々を観光で来日させるためにはハラール(食べ物)、モスク(お祈りする部屋)の整備が必要である。大阪では少しずつ受け入れが進んでいて、関西空港内や大阪駅のそばにイスラム教の方用の設備ができている。
 
5.2009に同性婚を認める法律ができたが2006年の時点で兆しがあったか同性婚についてはどう思うか

(勝野様)
スウェーデンで初めて同性愛の方にであった。日本の芸能界では「ネタ」でしかでないが、向こうはカミングアウトし、受け入れている。
たまたまストックホルムで世界的なゲイの方のお祭りが留学宇宙にあって行った。ただキリスト教などの教義的理由で禁止される国もある。(自分の考えとしては宗教が無いからこそ、同性愛容認への考え方は広まりやすい可能性が日本にあるのではと述べ、勝野様も納得されていた様子であった。)
 
6.他にスウェーデンに行って何か思うところはあるか否か?
(勝野様)
・自由であり、勿論偏見もあるが自分の意見を持ち、議論をする。また性別を超えてお互いを尊重し合い、人権を守ることや男女平等が当たり前の概念として存在している。
・気候が違う、冬は5時間くらいしか日が当たらない、そのせいでこもりがちになる。家具屋メーカーのIKEAができた背景も、家にいる時間が長いため、いかに家の中を心地よく、楽しくするかという概念から発達したと言われている。インターネット進んで危険(検索操作の危険性を感想に持ち、話題にした。)夏になると白夜もある。
・缶やビンなどの飲料には、初めからデポジット料金を含んでおり、スーパーなどで回収する際に返金され、リサイクル意識を生活に根付かせている。
・福祉面で、スウェーデンは育児休暇の消化率が高い、また父親のみが取れる育児休暇もあり、非常に男女平等の意識が高い。(個人的に)欠点は共働きであるがゆえに冷凍食品に頼り食文化が少ないこと。食べることが大好きなため、そこは好きになれなかった。
・留学をしてから日本を様々な視点から客観的に見れるようになった。

インタビュー実施日:2016/06/26

インタビューアーからのコメント

勝野様はスウェーデンへと事前に目的意識を持って行き、そこで北欧型の福祉国家を見た。自由な気風と議論を行える土壌を持つこと、そのための教育の重要性を再確認した。
私は国としての枠組みを他国から知ることはできても、それを構成する要素、つまり取材内容でいうと意見を持つ教育を支える国民の支えとそれを生かした自分らが参加するという民主意識、持った意見を尊重することで生まれる議論の土壌などは実際に留学してみないとわからないなと感じた。
躊躇していたが、自分もぜひ直接留学してみたい。

インタビューアー:塩田宜司(東洋大学2経済学部3年)
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