留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

国語教育を通して国際社会で活躍する人材の育成に貢献する

松村 佳苗氏

2016年11月11日  1,368ページビュー
アイルランド   イギリス   インターンシップ   オランダ   フィンランド  

【インタビューゲスト】 松村 佳苗さん
(東京都立園芸高等学校 教諭)
 

イギリス、アイルランド、フィンランド、オランダの小学校、中学校、高等学校を訪問し、日本の文化などを英語で授業するインターンの経験をされた松村佳苗さんにお話を伺いました。松村さんは大学を1年休学し、留学されたそうです。
 
(学生)授業する時、気をつけたことについて教えて下さい。
 特に中学生・高校生は自分で調べる能力があり、日本語も独学で出来てしまいます。私がそこにいる意味を考えて、いろんなことが体験出来る、日本を実感できる授業をしたいと考えました。特に印象に残ったのは、震災のことを教えた時のことです。被害者が何万人といっても数が大きく実感しづらい。そこで自分自身に置き換え考えられるように、笹原留衣子さんの「おもかげ復元師」という絵本を使いました。遺体を復元した体験をもとにかかれた絵本です。片方のページに復元した人の顔、もう片方のページにはどのように亡くなったかなどの情報が載っていて、ひとりひとりに焦点を当てています。文章の意味だけでなく、彼らが文章の意味を深く理解できるよう心掛けました。
 
(学生)日本で今後行う授業で挑戦したいことはありますか?
 評論文の授業で文化の多様性を学んでもらうために本文読解だけでなく、まず日本語と外国語の違いから文化の多様性を学んでもらいたいと思います。言語と身の回りの事物を観察するなどして考えさせ、日本と異文化の違いを話し合い、模造紙にまとめて発表する活動を取り入れたいと考えています。
 
(学生)海外でのインターンを選んだ理由はなんですか?
 日本で学ぶだけでなく、まず自分の世界を広げたいと考えました。自分が高校生から目指していた夢はもしかすると思い込みかもしれない。それでは自分にとっても生徒にとっても不幸なことだと思いました。そこで、もう一度自分に合っているかどうかを見極めたいと考え、実践的な経験を求めて海外を選びました。それともうひとつ、考えるときに使う言語に限界があるということはその人の世界の限界です。私の言語が豊かになれば私の世界が広がって生徒にもたくさんの引き出しを持てると考えました。
 
(学生)ではなぜ留学ではなくインターンだったのですか。
 大学で座って学ぶことは受動的だと考えました。自分は能動的な経験がしてみたかったことと、教育に携わりたかったというのが動機です。世界に通用する言語力だけでなく、国際人になるには異文化の多様性を理解して、相手を尊重しなければいけない。まず自分を尊重出来ないと他者のことも尊重できない。日本で漫然と過ごすのではなく、一步外に踏み出すことで日本のことがよく見え、自分が気づかなかった面白さに気付くことができます。日本を理解した上で、はじめて異文化教育がなせることだと思います。それは、教員になるにあたって大事なことだと感じました。国際的な視野を持つ国語科教員が増えるべきです。
 
(学生)海外に行く上での準備はどのようなことをしましたか?
 企業の試験や語学学校でのクラス分けでは大体英検準1級のレベルでした。高校生の問題集を見直したり、スピーキングやリスニングは留学生の友達などに手伝ってもらったりしました。あとは、どういう授業ができるか考えながら教材の準備や、パワーポイントを作りました。
 
(学生)教師になろうと決めた決め手はなんですか?
 最初は自分に自信がありませんでした。でも授業は自分1人ではなく、必ず相手が居て双方向の営みであり、完璧である必要は無いんだと気付きました。自分が不完全だと解っているからこそ、そこに変化が生まれる。それが教育には大事だと感じ、自分が教師になってもいいんだと考えるようになりました。
 
(学生)日本文化に興味を持ってもらう工夫は?
 例えば「生花はこれで宇宙を表すんだ」とか、書道では「漢字の成り立ちで愛という字の中には心が入っているんだ」と説明すると凄く興味を持ってくれました。あとは、彼らの名前を音読みで当てて、意味にもこだわりながら漢字にしてあげると、とても喜んでくれました。
 
(学生)他に印象に残ったことはありますか?
 イギリスでは、主体的に動かないとやる気ないと思われるというのは分かっていたので、自分の巣体制を意識して行動しました。オランダの人に対しては、自分の意見をストレートに表現しないといけない。自分では動いたつもりでもまだ足りないと言われてしまいました。例えば「Is it possible to ~?」とか「May I~?」のように、イギリスでは婉曲表現で話始めますが、オランダでは「I’d like to ~」と話し始めます。本質を変える必要は無いけれど、臨機応変に適応していくことが大事だと思います。それは異文化に馴染むため、コミュニケーションの手段であり、抵抗を感じる必要は無いと考えられるようになりました。異文化に適応するためには表現の仕方は変えなくてはならないということです。相手に対して、私はこういう感性ですよ、と最初に伝えてしまえばいいし、間違ったら素直に謝って表現を変えていけばいいのです。そう思ったら気が楽になってどこへ行っても自分のアイデンティティを大事にしつつ異文化、多様性を尊重していけると考えました。
 
(学生)良いと思った国の教育はなんですか?
 フィンランドの教育は非常に丁寧だと感じました。カウンセリングはカウンセラー、生徒指導は生徒指導と、教員が分担しているので一人ひとりに色んな面でサポートがしっかりしています。日照時間なども影響してフィンランド人はうつが多いけど、1人1人に色んな面でサポートがしっかりしていると思いました。
 
(学生)日本教育の長所、短所は何ですか?
 担任の先生が居て、授業、行事、学級等の色んな面が見られるのがいいところだと思います。
色々なことを取り入れて授業をより良く出来るし、学力をつけさせるだけでなく、子どもの自己好転感や達成感を育むには授業だけでは出来ないことがあります。担任が居ることによって、きめ細かくサポート出来ると思います。でも一方で教員の負担が大きいのは問題だと思います。学級や授業、部活持つのは大変です。事務もやらなきゃいけないから、日々仕事に追われて生徒と接する時間を十分に持てない。システムがもっと上手く動けば減らせる仕事があるのでは無いかと考えます。
 
(学生)未来へのアクションについて教えて下さい。
 海外で体得した異文化理解の手段や意義を日本の教育分野でも伝え、国際社会で活躍する人材の行く祭に貢献する。異文化理解にはまず自文化の理解が不可欠です。私は国語教員として国際社会に通用する国語教育の発展に寄与したいと考えています。また他者理解は異文化理解のみならず人間関係の根幹です。私は集団の中で生徒たちが多様性を認めて他者を尊重し、自己肯定感を高め生きる力を育めるように指導、支援していきます。
 
(学生)留学をしたいと考える人に向けてメッセージをお願いします。
 まず飛び込んでみて変わることがたくさんあります。本当にやりたいなら出来るかどうかや自信がないとかではなくて、本当に飛び込んでみるというのがまずは大事だと思います。
受け身で過ごしていても何も変わりません。本当に変わりたいなら時間を無駄にせず自分から動いて成長したいんだという意思を表現しながら自分でも意識することと、今の自分は何ができているかなと確認もできます。受け身だと楽しいだけで英語は喋れるかもしれないけどそれは日本でもできるし、帰ってきて忘れてしまうものでもあります。残るものというのはそこでの体験とか、それは絶対に忘れないで残るものだから、そういう成長が欲しければ自分で動かなきゃいけないと思います。

インタビュー実施日:2016/06/02

インタビューアーからのコメント

留学の際には日本文化を伝える機会を持ちたいと考えているので、松村さんの日本語の授業のお話はとても参考になりました。異文化を尊重するにはまず自文化から、というのは自分でも考えていたのですが、お話を聞いて一層学ぶ意欲が湧きました。
 また、多くの人が日本人の遠慮や消極的な態度は問題だと指摘する中、私は謙虚さを美徳と考える日本文化にも魅力を感じ、やるせない思いを抱えていました。しかし、松村さんの「本質を変える必要はない、表現を変えればいい」という言葉に、はっとさせられました。留学をする時には自分の考えを大事にしながら、それをどう表現したらいいかを試行錯誤したいと思います。

インタビューアー:太田東花 (国際地域学部国際地域学科2年)
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