インタビュー
目的意識を持って行って、その成果を持って帰る。
寺島 剛氏
2018年12月13日 1,625ページビュー 6カ月以上 中国 語学学校「なぜ留学しようと思ったのですか?留学に至る経緯は?」
宮城県の国際交流課によって交換留学生として派遣されました。当時は日本から中国への留学希望者が少なく、県立高等学校の国語教員に人材を求めたようです。その中で、東北大学で中国哲学を専攻したことと、独身であったことから、私が選ばれました。
「留学準備で苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
工夫したことは荷物の選択です。とても寒い中国東北部に9月から行くので、靴はトレッキングシューズに近い革靴にし、手荷物に純毛シャツ、登山用靴下、温かい下着などを最小限にまとめて持って行きました。また、海外へ渡ったことがなかったので、留学前に予行練習として、教員仲間の中国研修旅行にも参加しておきました。
苦労したことは航空機の搭乗券の入手です。これは帰路のことですが、当時の中国の航空会社では、地位の高い人のためにか、空席があっても売らずにおく場合が多く、オープンチケットを持って行くと、空いているはずなのに1週間以上先の便しかないと言われます。そこで直接空港の搭乗手続所へ行き、席が空いているはずだからこのチケットで乗せてほしいと頼んだところ、乗りたい便に乗せてもらうことができました。今ではなかなかないことだと思いますが、これもある種の冒険でした。
「留学前に不安だったことは?また、実際に留学に行ったらどうでしたか?」
留学前に不安だったのは移動です。単独行動だったので、中国の仕組みに対応し切れるかが不安でした。航空機の乗り継ぎは、周りの気配を観察して真似をしたり、表示を何度も見て確認したりしました。列車の切符を買う場面では、一般の長い列に並んでいると、私が中国人ではないと気付いたらしい親切な地元の方が、外国人用窓口を教えてくれました。言葉が完全に理解できなくても、何とか活動することができました。リスニングはもちろん不安材料でしたが、3か月ほど暮らしたころに耳が中国語に慣れて、内容をおおかた聞き取れるようになりました。
「留学で得たものは何ですか?」
中国語の技能はもちろんですが、長春、瀋陽、哈爾濱の日中戦争の史跡を巡ることで、より深い歴史の知識や、異なる解釈の視点を得ることができました。また、日本にいては感じられない中国人の気質や、考え方のコアな部分を体感することができました。
「留学が帰国後のキャリアや人生にどう影響しましたか?」
日本の学生に国語、特に漢文を教える際に、中国で入手した諷刺的な読み物や歴史教科書、史跡を巡って学んだことなどに基づき、日本と中国との解釈や評価の違いという、新たな視点を加えることができるようになりました。また、私の提出した報告書をきっかけに、後の世代の教員が留学してくれたのも喜ばしいことだったと思っています。
「今後留学を目指す学生へアドバイスをください」
せっかく留学しても、日本人同士で固まってのんべんだらりと行動してしまう人もいます。留学すると自分にとって新しいことがたくさんあるはずなので、必ず自分の持っている知識や問題意識、専門領域とつなげることを心掛けて活動するとよいと思います。ぜひ目的意識を持って行って、その成果を持って帰って来てください。また、自分は目的意識を持ち続けられるかどうか不安だという人は、学習に熱心な友人を留学先で見つけて、一緒に刺激し合うとよいかもしれません。
インタビュー実施日:2018/06/30
インタビューアーからのコメント
「印象に残った言葉」
目的意識を持って行って、その成果を持って帰る。
「お話を聞いて、感じたこと、学んだこと」
同じ期間留学したとしても、留学先での行動の積極性によって、学び取れるものの質や量が変わるということを聞いて、自分の興味に忠実に動くことが、有意義な留学にするための近道になるということを学びました。留学先で興味のアンテナを最大限に張り、より多くのことを感じ取ろうとすることが、その後の人生の視野や価値観の変化につながるのだと感じました。
インタビューアー:寺島 名穂 (社会学部 社会学科 1学年)