インタビュー
その経験が、生き方や心に化学変化を起こす
中島 克巳氏
2018年12月13日 409ページビュー 2年以上 ミャンマー「なぜミャンマーへ渡航(留学)しようと思ったのですか?留学にいたる経緯は?」
日本在住時、盲人の方々を雇い、マッサージ店を15年間営んでいました。そんなある時、ミャンマーからの盲人留学生がわが社に研修にやってきたのです。そして、そのミャンマー留学生から、ミャンマーにおける盲人の現状やミャンマーの抱える問題を聞きました。
当時ミャンマーでは、盲人用の教科書や勉強道具などが全く普及していませんでした。盲人の人口がとても多いにもかかわらず、進学や就職に対する整備もされていなかったのです。そのため、盲人は皆、家の中で家族の助けをかりながら、細々と生活をしているというのです。そんな現状を聞き、進学や就職ができないだけでなく、自立して生きていくことすら難しいことに愕然としました。そして、そんな現状を改善するべく、自費でミャンマーへの渡航を決めました。
「留学準備で苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
自費ボランティアである為、長期化に備えて資金調達に力を入れました。
日本で使っていた自動車を売り、住んでいた自宅を賃貸に出して、定期的にお金が入る状況をつくりました。物価なども考え、一年間で100万円ほどあれば生活できると想定し、合計で500万円ほど用意して渡航しました。
「留学中に苦労したこと、工夫したことは何ですか?」
物事の進行度合いや、人々の考え方が日本とは全く違い、そのスピード感になれるのに苦労しました。
「留学前に不安だったことは?また、実際に留学に行ったら、どうでしたか?」
不安に思うことはありませんでした。
~では渡航前どんな気持ちでいましたか?~
日本における、盲学校の歴史は400年前から続いています。そういう意味では、日本は盲人先進国だと思っています。そんな先進的な知識を持っている日本人として、ミャンマーでの盲人問題を解決しようと考えていました。
~実際にミャンマー(留学)に行ってどうでしたか~
実際に渡航し、感じたミャンマーについて少しお話します。
ミャンマーで起きていることは、世界中で起きている人間同士の問題と全く同じだと思います。貧困、貧富の格差、病気、医療不足、治安の悪化、宗教対立、麻薬問題、民族間の紛争、難民問題など、世界、特に開発途上国の抱えている問題点がミャンマーには集中しています。
しかし、この国には日本人が忘れてしまった、人情や愛情をむき出しにして接してくれる人々の心と、神様への信仰心が根強く残っています。仏教国ならではの人々の生きざまに直面し、自分自身の卑しさに日々内省しています。考え方や、日々の小さな行動が変わっていくことを感じています。ものの見方や、とらえ方も変わったと感じています。
~実際、渡航後にミャンマーの盲人が置かれる環境に変化はありましたか?~
ここ数年で、ヤンゴンを中心に、盲人マッサージ店がたくさん出来ました。実際、儲けがいいそうです。そのため今年は、募集に対して求人が追い付かないほどでした。これは、ミャンマーで今までにないほど、盲人の認知度が上がったことを表していると思います。
このため、盲人に対するマッサージのライセンスや、法律の整備が急務となっています。今年の3月から、政府主導のもと、マッサージライセンス委員会が発足されました。
少しずつですが、環境は改善されてきています。
「留学で得たものは何ですか?」
先ほど言った、考え方や行動の変化、ものの見方やとらえ方の変化が、得たものにも通ずると感じています。
「留学が帰国後のキャリアや人生にどう影響しましたか?」
現在実行中のミッションを含め、ミャンマーでは何か新しく事を始めるとなると、三歩進んで二歩下がる程度の進行状況です。そのため、なかなか早期に答えが出ないのが実情です。
支援というと、日本人もしくは日本側が主導権を握り、色々とやっていくものと、ミャンマー側が自立して発展していくために、ミャンマー人主体で、人材育成や教育などを行っていくものがあります。どちらも時間がかかるのですが、特に後者はより時間がかかるものです。私が行っているものの多くが、後者に当てはまります。何事もスローペースで、決定するまでにもかなりの時間がかかります。そのため、私自身、忍耐力と寛容さが備わったと思っています。
このことが、キャリアへどう影響しているかは不明ですが、人生においては大きな影響と変化があったと思っています。
~これからは、どのようなことに注力していこうと考えていますか?~
現在進めているミッションなどを中心に、今後とも、盲人の方々の置かれる環境の改善に力を入れていこうと考えています。
いま進めていることの一つが次のことです。ミャンマーでは、高血圧と糖尿病が国民病として蔓延しています。糖尿病は、中途失明の原因になります。ミャンマーに盲人が多い理由の一つがこれです。糖尿病が原因の中途失明を改善するために、今年から盲学校で栄養学の指導を始めました。このような、根本的な解決につながる活動も進めていこうと考えています。
「今後留学を目指す学生へアドバイスをください」
ここミャンマーにも、年間で多くの学生が短期留学、長期留学または旅に訪れます。
日本とは、言語や生活習慣、環境、歴史、経済、宗教など、すべてが全く違う国です。そんな全く違うものに触れ、多くの方々が、何かしらの発見と宝物ものを心に詰め込んで帰国していきます。
どうか、好奇心を持ってミャンマーの我々や、世界を訪ねてみてほしいです。温かく迎えます。その経験が、必ず生き方や心に化学反応を起こすでしょう。
インタビュー実施日:2018/07/11
インタビューアーからのコメント
「印象に残った言葉」
中島さんが最後に仰っていた、“その経験が、生き方や心に化学変化を起こす”という言葉がとても深く印象に残っている。今まで留学のすすめの授業で、講義をして下さった講師の方々も仰っていたが、新たな環境に身を置くことが、その人の人生や考え方に大きな影響をもたらす。中島さんは、そのような変化や影響を、化学変化という言葉で表現している。ただ変わるだけでなく、周りの人や自分自身ですら、思いもしなかった方向や規模で、変化が起こるのだとその言葉から感じた。
今回中島さんにお話を聞き、私自身も新たな環境に身を置いて、化学変化を起こしていきたいと思った。
「お話を聞いて、感じたこと、学んだこと」
中島さんは、常に色々な情報に対してアンテナを張っており、自分で“これだ”と感じたときは、迷いなくそこに向かって動き出す行動力を持っている。自身の信念や情熱に対して正直に向き合う姿勢に、驚きと尊敬の気持ちを持ってお話を聞かせていただいた。
お話を聞いていて、異国の地での状況や考え方、スピード感など、様々な違いに対しての対応力に驚かされた。熱い情熱を胸に、異国の地に行けば、焦ってしまうこともあるだろうと思うが、中島さんは、現地の人たちに合わせて物事を進めていき、時間がかかっても自身の情熱はしっかり持続させている。それは、明確な目標設定と、熱い気持ちがあってこそだと私は思う。何か行うときには、“自分は何をしたいのか”“どうするべきなのか”をしっかりと考え、ともに作業をする人たちは、“どのような考え方や特性の持ち主なのか”を把握して進めていくことが重要だと仰っていた。これは異国の地だけでなく、何かを新しく始めるときに、共通して大切なことだと感じた。これから、私自身も新しく何かを始めるとき、参考にさせていただきたいと思う。
今回お話を聞かせていただき、行動力や考え方はもちろん、日々の過ごし方まで、様々なことに対して、とても勉強になるお話を聞くことができた。授業の課題を通して、とても良い機会をいただいたと感じている。自分自身、これから留学に向け、今回学んだことを胸に行動していきたいと思う。
インタビューアー:阿部 汐里 (国際学部 国際地域学科 1学年)