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インタビュー

キャリアとしての留学、という選択

大河原知樹氏

2017年10月20日  6ページビュー
シリア   大学院(博士)  

【インタビューゲスト】         
大河原知樹先生(東北大学大学院国際文化研究科)
2回にわたってシリアに長期滞在し、現在では東北大学でご活躍なさっている大河原先生に、留学中のご経験と現在のキャリアについてお話を伺いました。
 
【ご自身の留学経験について】
大河原先生は大学の博士課程2年時にシリアに留学され、その後、青年海外協力隊の隊員として滞在もされている。そういった本格的な留学の前段階として、学部3年時にチュニジアで語学学校のサマーコースに参加した。「学部3年時の海外体験は1ヶ月半で、その時は語学学校にて授業を受けたにもかかわらず、話せるようになるという実感はありませんでした。」語学学校ではディベート等含めた授業を体験し、日本人はリーディングやライティングは得意でも、リスニングは苦手であると実感する機会となった。語学学校を卒業し、周辺国を旅行して帰国。その後はネイティブと話す機会は無く、語学の面ではブランクがあった。それでも、博士課程2年目でシリアへ留学をした時にはある程度話せるようになっていたという。学部3年時の語学学習の効果をその時改めて実感した。博士課程2年目での留学期間は約2年間。「在留許可の条件となる3か月の語学学習を終えた後は研究員としてフランス研究所に所属しつつ、研究材料を探すため公文書館に通っていました。」その後、再び青年海外協力隊としてシリアで2年間、古文書整理やデータベースの作成の仕事をしたが、そのきっかけは公文書館での出会いにあったという。
 
【ターニングポイント】
留学当時、当時シリアの公文書館には日本人の研究者が1年間在外研究で来ており、毎日隣り合わせで研究していた。ある時、公文書館の古文書の整理状況が悪いという話になったのだという。「どんな古文書が出てくるかわからず、時間がかかって大変だという話になり、古文書を整理する仕事があればやりたいと言ったことがありました。するとその人はJICAの所長と付き合いがあってその仕事が成立するよう働きかけてくれたんですね。結局帰国後2年でもう一度シリアに行く機会を得ました。」留学中の何気ない一言が、次のキャリアへとつながった。
 
【留学とキャリア形成の関係】
先生の経験では、キャリア形成に関しての影響が大きかったのはシリアで公文書館に通ったことだ。そこで様々な資料を出してもらって、研究分野であった16世紀から19,20世紀までのオスマン時代のシリアの資料として、イスタンブールから送られてくる勅令の控えを読み込んだ。「実際に留学というのは、将来的にどういう風に将来設計するかによるところも大きい。私の場合は学部1年生のころからアラビア語の講義をとっていて、将来アラビア語を使った研究がしたいと考えていました。」研究者という道も、なるための明確なプロセスがあるわけではないので甘くはないという。そのような中で留学は、行っていなかったら現在のキャリアにつながっていなかったという程貴重な経験となった。
 
【現地に行くことの意義】
先生は、自分の研究対象の社会を見るという点において、現地に行くということが重要だったという。「単に文字になっているものを読むだけではなく、実際に行ってそこに暮らしている人達と話をすることに意味があります。景色を見る、現地の生活を見ることとともに、現地の人たちの行動に対して、どうしてこんなことをするのだろうか?どうしてこんな話し方をするのだろうかと疑問を持つというのも大事なこと。こちらはもうバーチャルでは体験できない。」シリアでは人間関係が、一見オープンなように見えて複雑であると感じた経験もその一つだ。
 
【時期や人との出会いも大切】
研究のための留学は、1年では短すぎるが3年では長すぎると言われる。そのため特に長期の場合、行く時期は重要な問題である。先生の場合はシリアに行かれたのが1993年4月、当時は冷戦が終了していて周辺国から物資が豊富に入ってきたそうだ。「あのタイミングより前でも後でも良くなかった。留学する時期は選べないが、90年代だったというのは幸運だったのではないかな。」また、学部3年時にシリアも回って体験していたことが、長期留学を決める上でも役に立った。「事前に過ごしてみて、ああここなら死なないかもな、みたいな。旅行という方法にしても下見に行ってみるのはいいかもしれませんね。」ただ、留学に大事なのは、タイミングはもちろん、そこで出会う人なのだそうだ。「その場所で会う人は、現地の人もそうだし、私の場合はそこで日本人の研究者にあったことが一つのターニングポイントになった。」人やタイミングは私たちには決められないことが多いが、自分で十分に準備をしたうえで、タイミングや人との出会いを大切にする意識が必要なのだろう。

インタビューアーからのコメント

2回にわたる留学経験が、先生自身のキャリアの中にうまく組み込まれていたことが印象に残った。自分のキャリアプランと照らし合わせた留学の目的を持って臨むことで、留学経験を通して得られるものはより多くなるのだと感じた。

インタビューアー:五十嵐琢人, 松村春恵(東北大学法学部法学科1年)