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インタビュー

あるハプニングがチャンスに!?

村山 斉氏

2017年10月20日  7ページビュー
アメリカ合衆国   ドイツ  

―村山 斉さんの紹介-
東京大学カブリ数物宇宙連携機構(Kavli IPMU)機構長、特任教授、理論物理学者
アメリカカリフォルニア大学バークレー校物理教室教授
1991年東京大学理学系大学院物理学専攻課程修了(理学博士)。東北大学大学院理学研究科物理学科・助手、ローレンス・バークレー国立研究所・研究員、アメリカカリフォルニア大学バークレー校・助教授、准教授を経て、同大学物理学科MacAdams冠教授となる。アメリカプリンストン高等研究所メンバー、2007年10月より現職。専門は素粒子物理学
<参照ページ>
http://www.jaxa.jp/article/interview/vol57/index_j.html
http://www.ipmu.jp/ja/hitoshi-murayama
 
Q・・・メインの質問
q・・・会話の途中でふと出てきた質問
 
Q1「村山さんが日本ではなく、海外で後の人生に影響を与えた事件を教えてください。」
A,「小学校6年生~中学校3年生まで、父親の会社の仕事関係で、家族が西ドイツのデュッセルドルフに駐在していた時の事

<グーグルマップより>

夏休みの集団子供キャンプで、イタリアの北部でドイツ語が使われている地域に電車で向かう際、車掌にビザの提示を求められたのですが、当時持っていたドイツのビザがイタリアでは通用しなくてピンチを迎えることになったのですね。この時はEUなどという国境を自由に超えられる組織などなく、ドイツに4年間住んでいたとしても、イタリアでは通用しないのでどうしようかと困ることになります。
当時の電車はハリーポッターの電車のようにそれぞれ個室に分かれていて、席が向き合っていたので、向き合っている椅子をどちらも倒し、その下に隠れることで難を逃れることができました。」*もちろん今やるとアウトですので絶対にマネしないでください。

Q2「その事件が村山さんの人生に何の影響を与えたのですか?」

A「ある意味で度胸がついた。たくさんいろんな国があって、それぞれの間に国境があって、お金が違って、言葉も違っていろんなシステムが違っているというのが、身近な体験として得ることができた。それが、大人になってから物理学者として仕事をしている際に、どんな国の人に会っても、どんな言葉を使う人に会っても、驚かないし、物怖じしない。それぞれ違うシステムの中で生きてきた相手の立場をある程度想像して理解することができるようになった。いろんな国の人と仕事するのがスムーズになったと思います。」

q「『相手の立場を理解する』というのは、村山さんも会う前に、ある程度相手のことを調べたりとかしているのでしょうか?」

a「話しているうちに、相手の言っていることの背景に対して想像がつくということなのですよ。例えば、初めてインドに行った時に、ある研究所の寮に二週間住んでいたわけですけれども、いろんなお世話をしてくれる人にお願いをすると、英語は一応通じるのですけど、お願いした後に首をふられるので、『ノー』って言っているのかな?と思ったのですが、しばらくその人達を観察すると、首をふることが、『Yes』であることがわかった。それは要するに、いろんな人の振る舞いが日本人とか、私はアメリカにずっと住んでいたので、アメリカ人なら『こういう意味だな』と思って解釈するわけですけれども、『もしかしたら、違う国の人達は、同じ振る舞いでも違う意味になっているかもしれない。』という想像力が働くので、そうすると『全然違う意味なのだ』ということが、だんだんわかるようになってくるのですよ。」

q「それは、慣れとかだんだんとか…村山さんが歴史とかの勉強を一生懸命して、社会的知識を身に付けたというわけではないのですね?」

a「社会的な知識を身につけたとかいったわけではなく、違う国の人は予想もつかない行動もすると想像できるだけで、理解できるようになるわけですね。だから、難しいことではないけれども『もしかしたら、これは違う意味かもしれないな』と一瞬思うだけで、全然違うコミュニケーションが取れるようになるわけですから、そういう経験があったというのは役に立ったと思うのですね。日本は等質社会で、みんなが同じような振る舞い、考え方をするのが当たり前と思っていますから、そうじゃない世界を想像できるようになるのはとても大事なことなのです。

 

Q3「それが今につながっていますか?」

A「ええ、例えば、今このように日本でも仕事をするようになったのですけれども、ここでの仕事の一つとして外国のいい研究者を日本に引っ張ってくる、リクルートするというのが仕事なわけですね。その時に、『外国の人が日本で生活しようと思ったら、どういうところが困るだろうか?』ということも、自分が外国に行った経験から、いろいろ想像ができる。想像ができると、その分何とか困らないように準備してうまくいくようなシステムを研究所の中でつくっておくができますよね。そうして、外国の人に『来てください』って言う時に、外国の人は『え~日本なんて所にいて暮らせるかどうかわからないよ』ってみんな思うわけですけれども、『いや、そうじゃなくて○○な感じに対応してあるから、来ても問題なくすぐに研究を始められるよ。大丈夫だよ。』って説得できますよね。相手がどういうシステムから来てどういう問題に陥りそうかと想像できるとそれに対処することができて、日本での暮らしに不安を抱いている研究者を説得して日本に連れてくることができるわけですよ。」
q「そうしてやってきた研究者達も快適に研究できるから、業績も上がりますよね?」

a「そうですね。業績が上がると、その研究者が次に移っていくときに、いい所に行ける。すると、次に来る人達は『あの人はここに3年いて、あんなにもいい所に行けたのだから、自分達ももっといい所に行けるようになるだろう』と期待を持ってもっとたくさんの人達が行きたいようになる。どんどんどんどん良くなるわけですよ。実際にこの研究所も良くなってきているのでそういった点では、子供の頃の経験が生きているのだと思います。

Q4「留学をすることはオススメしますか?」

A「します。ぜひ行ったらいいと思います。」

q「なぜでしょうか?」
a「やっぱり、いろんな経験ができるから。日本でずっと育っていると、日本はほとんどの人が日本人で、ほとんどの人が日本語をしゃべれて、特に日本人の場合は、相手も自分も多くの同じ体験をしてきて、共通のものが多いという前提でコミュニケーションをとるのですけれども、外国の人に会う時には、それがまったく通用しないわけですよね。そういう場で自分の言いたいことをどうやって伝えるか、相手の言っていることをどうやって理解するのかというのは、経験してみないとできるようにならないのですよ。さっきの私の話だと、子供の時にそういう経験をしていたので、一度そういった経験をすると、人とのコミュニケーションの仕方がガラッと変わって、どうやって自分の言いたいことをきちんと伝えるかというのをちゃんと考えられるようになるし、相手の言おうとしていることも相手の持っている背景を想像しながら、より深く理解できるようになるし、そういう経験をしておくということが、後ですごく役に立つと思うのですね。だから外国にぜひ行って、特に若いうちに行って、『日本の常識がまったく通用しないのだ』という、ある意味ショックを受けるぐらいの経験をしておいた方が、後ですごくいいと思います。」

インタビューアーからのコメント

今回のインタビューから、世界中には多様な価値観や視点があり、そのおかげで学問の先端分野が創り出されていくとわかりました。自分が進みたい世界を切り拓くためにも、多様性を受け入れていく必要があり、留学はそういった経験を積む場として良い機会になると考えました。留学する際には、今回の話を参考にし、今後の自身の学習などの指針に役立たせて、オリジナルの世界を創り出していく所存です。

インタビューアー:近藤暖(東北大学理学部物理系1年)