留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

特別インタビュー

留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。

京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授 関山 健氏

留学先:

香港大学(社会科学学院修士課程)

北京大学(国際関係学院博士課程)

ハーバード大学(サステナビリティ学専攻修士課程)

 

大学学部生時代には海外へ行ったご経験がないという関山先生。最初に就職先で留学できる制度があったため、それを利用して香港大学での修士号取得を目指されたのが最初の留学です。その後、北京大学、ハーバード大学と、大学院留学を三度もご経験されています。社会人として働きながらどのようにして留学前の準備を進められていたのか、留学中の様子、留学後のご自身の変化などについてお話を伺いました。

 

1.留学すること自体を決定された動機は何ですか。

最初の就職先で、入社後3,4年目に新入社員全員を留学させてくれる機会を得たためです。大学学部生時代には海外へ行った経験がなく、飛行機すら乗ったことがありませんでした。

 

2.社会へ出てから仕事を経験した後で留学することの利点は何ですか。また、欠点はございましたか。

一つ目のメリットは、留学費用を自分で賄えるため「経済的な事情で留学が出来ない」というハードルが下がる点です。もう一つのメリットは、学生時代とは異なる社会人としての視点や問題意識が芽生えることで視野が広がり、高いモチベーションで、多くを吸収出来ることかなと思います。

 

デメリットは、「帰るところがない」かもしれないということでしょうか。私の一度目の留学は職場からの留学だったため帰国後はまた職場に帰ることができましたが、二度目の留学の時は仕事を辞めてから留学をしていたので、帰国後に再び就職活動をしなければなりませんでした。もちろん、留学によって専門性を高めれば、転職にも有利になるとは思います。

 

3.留学前の手続きなどで大変だったことはありますか。

たくさんありますよ(笑) 特に、留学ビザの取得は面倒でした。たくさんの書類を用意したり、わざわざ大使館に行って面接を受けたりしないといけないので、特に平日の昼間に仕事をしている立場でのビザ取得は大変でした。

 

ビザ取得に関連して、予防接種を前もって計画的に受けておくことが大事です。留学に必要な予防接種は留学先の国や学校ごとに異なります。特に二度接種しなければいけないワクチンは、数週間から数か月の接種間隔を空けなければいけないものもあるので、留学の何か月も前から準備を始めないと間に合わない場合があります。

 

往々にして、この予防接種の準備を忘れる人が多いと思います。私は、中国留学の際も米国留学の際も、全ての予防接種を終えるのが間に合わなくて、不慣れな現地で打つ羽目になったりしました(笑) 留学しようと思った時に、書類関係の準備だけじゃなくて、ワクチン接種スケジュールも確認することがプチアドバイスです。

 

4.留学先として香港大学・北京大学・ハーバード大学を選ばれた理由は何ですか。

最初の留学は、職場から中国での2年間の留学を指定されたので、その2年間の間に中国語と英語の語学力向上と修士号の取得を目指すことにしました。香港大学は、英語ですべての授業を行うアジア地域トップクラスの名門大学で、1年間で修了できる修士課程もあったので、私の条件にぴったりでした。

 

その香港大学で国際関係論と中国に興味を持ったことがきっかけで国際政治学者にキャリアチェンジをしようと思ったのですが、しかし香港留学だけでは中国を理解しきれないと思い、さらに北京大学国際関係学院博士課程へ留学しました。

 

北京大学を卒業してから数年後、国際政治学者として自分の幅をさらに広げるために、今度はハーバード大学のサステナビリティ学修士課程へ留学して、環境問題や資源問題について学びました。

 

5.留学前にどの程度語学を勉強していらっしゃいましたか。(中国語、英語ともに)

中国語については、学部時代に第二外国語で中国語を選択して、2年生の冬に中国語検定3級に合格していました。これが、職場から中国留学を指示された理由だと思います。でも、実際には、留学するまでは「你好」とか「謝謝」ぐらいしか話せませんでしたね (笑)。そこで中国留学前には、もう一度基本的な単語・文法を復習してから出発しました。

 

香港大学の授業は全て英語で行われるので、留学前に英語の勉強もしました。留学前の私は全く英語ができなくて、大学4年生時の英語力はTOEFL-PBTで420点(TOEFL-iBT換算で約35点)くらいでした。そこから留学までの2年間、毎日英語の勉強をしました。朝の出勤途中や帰りの電車の中で英語テキストのCDを聞き、毎日英単語の本を繰り返して、働きながら毎日1、2時間ぐらい英語の勉強をしました。そうして、やっと留学直前に、TOEFL-PBTで580点(TOEFL-iBT換算で約90点)が取れました。

 

5-2 留学後、変化はございましたか。

中国留学後、香港大学へ留学する前に、まずは北京の語学学校で二か月間、中国語のマンツーマン・レッスンを受けた結果、だいたいの日常会話はマスターできました。日本語と中国語は共通の熟語が多いので、日本人だと基本的な文法や発音を学習して練習すれば、すぐにある程度話せるようになると思います。香港へ行った後も中国語の独学は継続して、一年後には中国政府公認のHSKという中国語検定で9級(中国文系大学院入学基準以上。初級通訳レベル)を取得することができました。

 

英語についても、旧イギリス領である香港で主に英語を使って生活していたこと、香港大学の授業が英語で行われていたことなどから、中国留学帰国後に受けたTOEFL-PBTでは640点(TOEFL-iBT換算で約110点)を取ることができました。

 

6.現地での勉強で苦労されたことは何ですか?

語学です。私は、決して語学力が高くない状態で留学に出てしまいましたので、中国でも香港大学の授業でも何を言ってるのか、最初の頃はほとんど分かりませんでした(笑)。また自分が言いたいことの3割も言えないもどかしさもありました。したがって、語学は留学に行ってから勉強するのではなく、留学前にどれだけ勉強したかで現地で得られるものが変わってくると思います。

 

 

7.現地での授業についていくためにどのように準備をされましたか。

予習はすごくしました。リーディング課題は内容をしっかりと読んで自分なりの意見をメモしてから授業に臨んでいました。そうしないと本当に授業で何を言っているのかわからないし、理解できない。当てられても発言できない。香港大学でも、北京大学でも、ハーバード大学でも、クラスメイトの現地学生や他の留学生の多くに助けてもらいました。

 

8.現地での授業スタイルで日本と異なる点はありましたか。

中国のほか、短い期間ですが韓国の大学にも教員として在籍したことがありますが、東アジアの国はどこも日本の授業スタイルとあまり違いはないと感じました。知識詰め込み型というか、基本的に先生が一方的に話をするスタイルが主流でした。

 

一方、アメリカの大学は、学生の発言やディスカッションが重視される授業スタイルで、先生が学生を授業に引き込むよう工夫を凝らしているという印象でした。カリキュラムもしっかり練られていて、必修科目の宿題をこなして行くと自然と学位論文につながっていくように考えられてデザインされていると思います。

 

9.現地での生活での困難な点はありましたか。

日々が困難の連続でした(笑)。 授業中、自分の考えを3割程度しか伝えられないと先ほど言いましたが、友達との会話や街中でも買い物などでもそうでした。また、特に病気にかかった際には、体調不良な状態の中、不慣れな土地で病院を探して、症状を外国語で説明しなくてはいけないので、大変でした。ただ、色々な困難はありましたが、今振り返れば、それらを全て含めて楽しかったなと思います。

 

10.生活面で日本との違いを感じた部分や魅力に感じた部分はありますか。

全てが違います (笑) 香港、北京、ボストン三者三葉で楽しかったです。

 

11.留学中の休暇の息抜きは何かありましたか。

旅行ですね。中国でもアメリカでも意識して積極的に旅行には出かけました。例えば、香港は東南アジアのさまざまな都市とのアクセスが良いので、香港留学中は中国国内はもちろん東南アジアの様々な国を見て廻りました。あるいは、ボストンにいるときは、ニューヨークやワシントンDCなど米国東海岸の街を旅行しました。またボストンは、美術館や博物館がとても充実しているので、それを見て回るのも、とても楽しかったです。

 

12.ホームシックのような状態をご経験されましたか。またそれをどのように乗り越えましたか。

ホームシックにあたるのか分かりませんが、「日本語欠乏症」には陥りました(笑)。たとえば、紅白歌合戦は、日本にいるときには特に観たいと思ったことはありませんでしたが、初めて留学した年の大晦日には、紅白歌合戦をどうしても観たくなりました。また、香港のローカルチャンネルでは、日本語のアニメを放映していたので、日本では決してわざわざ見ないようなアニメでも、ついつい見てしまいましたね。

 

留学中には、なるべく日本人コミュニティと距離を置いて外国語を使ったり異文化に触れるのが良いとは思いますが、あまりにも頑張りすぎてしまうと精神的に鬱になってしまったりすることもあるので、注意が必要です。今の時代なら、インターネットで動画視聴なりオンライン会話なりが気軽にできるので、適度に日本語で息抜きするのは良いんじゃないかなと思います。

 

13.留学がご自身のキャリアにどのような影響を与えましたか。

180度人生を変えるインパクトがありました。22歳の学部卒までは、語学も嫌い、海外も嫌だし、留学なんて考えられないと思っていましたが、最初の就職先が留学に出してくれたことをきっかけに、今まで考えてもみなかった環境に行ってみた結果、今まで自分に無かった3つの変化を得ることができました。

 

変化の一つ目は、語学力です。英語はすごく苦手でしたが、留学を通じて語学力は飛躍的に伸びました。

 

変化の二つ目は、新しい専門性です。大学時代は法学部で法律の勉強をしていましたが、留学をして初めて国際関係論に触れて面白い分野だなと思いました。

 

三つ目の変化は、視野の広がりです。留学や海外生活など考えたこともありませんでしたが、留学中に異文化での生活を経験したり、様々な国や地域を見て回ったりした結果、視野がとても広がったと思います。

 

この3つの変化によって、それまでの自分の人生観、キャリア観が大きく変わりました。留学前にはなかった自分の新しい3つのスペックを今後のキャリアにどう生かそうと考えて、国際政治学者を目指そうと思いました。

 

14.複数回留学することの良さはありますか。

留学は、できるものなら何回でもしたら良いと思います。その度に学ぶことがあります。自分が成長するために何が必要かという観点を意識して複数回の留学をすれば、留学をするたびにすごく大きな学びが得られるのではないかと思います。私自身、今振り返ると、香港、北京、アメリカの留学を経て、その度に自分の幅が広がって、結果として今の自分に繋がっているとしみじみ感じます。

 

15.2回目以降の留学では、1回留学しているからこそ活かせる部分などはありますか。

語学については、一つの外国語をある程度マスターすると、二つ目以降の外国語のマスターが楽になると言います。私も、一度目の留学の1年目で中国語をある程度マスターしたあと、英語の力も伸びやすくなったように感じます。

 

16.留学を迷っている人や、これから留学することが決まっている人へのメッセージを是非お願いいたします。

 

留学を迷っている人へ

「行けない理由を探すより、どうやったら留学に行けるかを考えてください」

 

留学に行けない理由は人それぞれあると思いますが、多くの人が「経済的な負担」「語学力の不足」「就職活動への支障」の3つを理由に留学を諦めています。しかし、そのどの理由も、本気になれば解決策があるはずです。「経済的な負担」なら、一度社会へ出て貯金をしてから留学に出ることだってできます。留学に行けない(行かない)言い訳を探すのではなく、どうやったら留学に行けるかを考えてもらいたいと思います。

 

これから留学することが決まっている人へ

「日本でできる語学の勉強は全てやってから留学してください」

語学留学をする人であっても、日本にいてもできる文法や単語の暗記などは日本で済ませ、現地では、現地でしかできない会話の練習や異文化体験に時間を割くべきだと思います。交換留学など何かの分野を学びに行く人なら、当然ながら語学力が重要です。留学前に語学をどれだけ勉強したかによって、留学中にどれだけ語学力が伸びるかも、どれだけ語学以外のモノを吸収できるかも大きく左右されます。留学が決まっている人には、ぜひ「日本でできる語学の勉強は全てやってから留学してください」と言いたいです。

【編集後記】

東洋大学国際学部国際地域学科3年 黒山 寿文
東洋大学国際学部国際地域学科3年 立原 璃子
留学は自分の人生観、キャリア観が大きく変わる貴重な経験です。
京都大学 大学院総合生存学館(思修館)准教授
関山 健 氏
失敗は成功のもと
フードダイバーシティ株式会社
ヨコヤマ・アンド・カンパニー株式会社
横山 真也 氏
留学は行くべし
後藤 愛 氏
楽しかったこと、辛かったこと、全てが自分の糧になります
東洋大学国際学部国際地域学科教授
岡本郁子 氏
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一般社団法人 グローバル教育推進プロジェクト(GiFT)
鈴木大樹 氏
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