留学のすすめ.jp

Invitation to Study Abroad

Disseminating the Impact of Study Abroad
Inter-generational Knowledge Transfer

インタビュー

留学は「自分への挑戦」

小野寺 朋子氏

2016年11月11日  233ページビュー
1年以上   イギリス   大学  

【インタビューゲスト】小野寺 朋子 さん

大学卒業後、高等学校の英語教諭を勤め、現在は秋から香港大学大学院で教育学を勉強することが決まっている先生に、お話を伺いました。
 
(学生) ― なぜ大学在学中に1年間イギリスに交換留学を?
中高生の頃から洋画好きでずっとアメリカに行きたかった。でも大学から読み始めた小説の影響でイギリス文学が凄く好きになったのと、交換留学でアメリカに行きたい人がたくさんいて、私は人と同じことをするのが嫌いだからみんながアメリカなら私は違うところと思って、イギリスに決めた。留学する前に日本に来た留学生と積極的に交流して自ら英語を話す訓練をしたので、会話をするうえで支障はなかったけど、現地の方言はノーカバーだったから、ローカルな人と会話するとき、私が話す英語は理解してくれるけど現地の人が話す英語を私が聞き取れなかった。またイギリス人は自虐ネタでジョークを言うので、本当にジョークなのかどう反応していいのか分からず適当に笑顔で頷いていた。分からないことは分からないとはっきり言えなかったことで、日本人としての建前が私にもあるということが自分の中で浮き彫りになった。最初の数か月間は大変だった。
 
(学生) ― 「文学を研究しても役に立たないと中国人留学生から言われた」とは?
  留学生同士のガイダンスで中国人と交流していた時に「なぜ文学を勉強するの?」と聞かれて、文学作品に魅かれたことを話すと、「そんなの勉強して将来何の役に立つの?」と言われた。反対に「なぜ経済学を勉強するの?」と聞くと、「成長途中の中国でビジネスを興すためだ」と言われた。同じ日本から留学した人の多くは文学部で、将来どんな職業に繋がるか分からない。日本は既に経済成長を遂げて安定期に入っていたので、学生が「国のために事業を興して生き残っていこう」という意識を持たずとも、大学を出れば仕事もある程度の給料も保証できた。中国人は「経済成長の真っただ中で生き残っていこうという意識で実践的なビジネスを勉強する」という、自分の将来に貪欲ではっきりした将来の計画をもって留学していた。それを受けて、日本人は文学を専攻する余裕があるのだと気付き、はっとした。好きな分野を専攻して趣味の延長として大学で学んでいたけど、中国人にとっては好きなことであり将来役に立つこと、自分が役に立てる分野を学ぶなど目的を持っていて、その差を大きく感じた。どのように社会に貢献するか考えていなかった。
 
(学生) ― その後「自国のニーズ、世界のニーズを意識した学びを」と?
  目的ある学びとして、自分の好きな分野が社会にどう貢献できるのかを考えて勉強するときに、世の中で何が足りないのか、何を補う必要があるのかという、社会のニーズを知る必要があると考えた。英語や国語など教科に興味を持たせることも大事だけど、その教科を勉強して将来どう役に立つのかまで教えなければ、子どもたちは世の中で何が起きているのか知らないまま社会に出ることになる。しかし、生徒が学ぶ教科と世界のニーズをリンクさせて教えることで、生徒はその教科の有用性を理解できる。その繋がりをつくれる学びづくりをすることが、教師にとって自分の担当する分野を教えるのと同じくらい大事だと思っている。
 
(学生) ― 教師になった後も留学したいと考えていたのか?
  私が高校生の時と現代の高校生では、時代も進路や考え方に対する悩みも全然違う。勤務の忙しさゆえに、世の中の流れと自分の中の常識にギャップができていると感じた。教育問題についての情報はあるが、それに対して政府やNPO、NGO、地域はどのように対応しているのかという知識が追い付いていない。だからもう一度自分の中の教育観をアップデートしなければと思って、受け持っている生徒を卒業させてから、大学院に行って教育学の勉強をしようと思った。                                
  社会人を経験してからの留学は「目的」を持った留学。大学生は「経験」としての留学で、異文化理解や趣味の延長だったことが大きな違い。学校を辞めて大学院に進学したいと言ったとき、周りの先生からの理解はすぐに得られた。「教師こそ世の中を知る必要があるのに、多忙で自分を磨く暇がない。このままだと生徒の受験の知識は充実するが、教育問題にどう対応していくかというスキルは伸ばせない」というのは周りの先生も感じている。日本は終身雇用制度が根強いが、海外に行くと転職が当たり前で各々が自分のスキルアップやキャリアアップに目を向けている。安定志向でも良いが、社会人で自分の立場や仕事に自信がないとか不満がある人は思い切って自分に投資をすることも大切だと思う。
 
(学生) ― 留学を考えている大学生にひとこと
「やってみないと分からない」。失敗することはたくさんあるけど失敗しないと成長しない。誰だって失敗するから、恐れを持っていてもやらないと。ホームシック等多様な問題は起こるけど、助けを求めればきっと周りが助けてくれるから心配しないで。実際に行動しないと、留学したい気持ちだけ残る。人生は一度しかないから、同じところにいて文句を言う生活なら思い切って環境を変えてみる。留学をプラスにするかマイナスにするかは自分次第だし、挽回するのも自分次第。留学して「自分自身に挑戦」することを勧めたい。
(学生) ― ありがとうございました

インタビュー実施日:2016/06/14

インタビューアーからのコメント

イギリスでの交換留学で経験し学んだことを、教師になって生徒に還元し、そしてなお、「自分の教育観をアップデート」するために教師を辞めて留学するという姿勢は、日本社会にとって先駆的で魅力があり、その姿勢から大学生が学ぶべきことも多いように感じた。留学の価値を考えるうえで、行動力と考え方が非常に参考になる有意義なインタビューだった。ぜひ、多くの学生をはじめ、社会人にも伝えて、留学をもっと身近なものにしたい。

インタビューアー:大山 瑞稀(東洋大学2教育学部1年)
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