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インタビュー

「イノベーションはカオスの中から生まれる~サンフランシスコで活躍する日本人研究者~」

梶村 真吾氏

2016年1月12日  2,753ページビュー
6年以上   アメリカ合衆国   大学院(博士)  

日々新しいことを開拓していく研究者独自の発想は、いったいどこから生まれてくるのか―カリフォルニア大学サンフランシスコ校にて、現在研究者として活躍している梶村真吾先生に、インタビューを試みました。
 

――梶村先生は、カリフォルニア大学に助教授として就任する前に、過去にハワイ大学大学院、ミシガン大学大学院、ハーバード大学医学部という、日本でも世界でも著名な大学院に幾度も研究留学を行っていたようですが、初めにハワイ大学に留学しようとした最初のきっかけは何だったのですか?

ラッキーなことに、当時、二年間ハワイ大学で留学することを条件に、奨学金をいただくことができたことがきっかけです。ハワイ大学に留学する前はバックパッカーをしたりと、ギャンブラーの精神はもっていたかもしれないですが、サーフィンが好きだったので、ハワイでサーフィンをしたり、当時英語があまり分からなかったのもあって軽く英語でも習いたい、きっかけは実はそんな些細なものでした。

それから、もともと小さいころから魚が大好きでして、また東京大学農学部の魚の生理学研究室(水族生命科学科)を卒業したこともあって、魚や生物の研究をしたかったのです。今では大学の教授という仕事についていますが、当時は教授になることについては全く興味がなく、つまらなそう、とすら思っていました。ただ、サイエンスは昔から好きでしたので、趣味の一環を仕事にすることができたのはとても幸運なことと思っています。
 

――では、ハワイ大学への留学をきっかけとし、海外に渡って生まれた自身の価値観の違いはありますか?

世界には本当に様々な人や文化があるもんだと思いました。日本という国で、我々は善くも悪くも、ある程度同じような価値観を持つことになると思います。たとえば、日本でよく巻き起こるブームがいい例だと思いますが、好きなこと、嫌いなことはある程度似通っているのではないでしょうか。逆をいえば、日本は非常に統率のとれた国であるので、そういう面で強みはあると思いますが。私は科学者なので既成のものを壊すことが仕事の一つでもあります。いわゆる王道からはなれることは、時として大切になりえるのです。たとえば、我々を含めてアメリカの研究室においては、先生(私)から言われたことを単にやるのではなく、「自分で考えること」が重要になります。つまり「君はそれが本当に面白いと思っているのか?」と自問することですね。これは先生に言われることではなくて、答えは自分の中にしかありません。

また、歴史を見れば明かなように、大発見はカオスの中から生まれます。ここサンフランシスコは、米国有数のリベラルな都市であり、多様な人種・国籍・バックグラウンドを認められる文化があるからこそ、多様な価値観が存在しています。私は、多様性が認められる、つまり個々の多様な生き方に対してオーダーメードで対応できる社会が、豊かな社会であると思う。そしてそのような混沌とした多様性の中から革新的な発想やイノベーションというものは生まれてくると思うのです。
 

――その多様な選択肢の中から自身の岐路を選択するとしたら、逆に、葛藤や悩みもつきないのでは?それにプレッシャーもあると思いますが、どう対処するのですか?

私は、そんな多様な選択肢があることは幸せなことだと思いますよ。そのような選択肢が認められない国も沢山あるわけですから。個人個人の考えが尊重されること、また個人にしっかりとチャンスが与えられていることが大事だと思います。
プレッシャーに負けない方法は、最悪の時を思い浮かべてみることでしょうか。たとえ大きな失敗があっても、日本もアメリカも先進国だから、例えばアフリカの国々や中東の難民の方達のように食えなくなることはないでしょう。病院にいけないこともない、私たちは非常に恵まれていると思います。それに、海外に引っ越しちゃえば、世間体も何もないから、どんなに失敗したって、失うものなんて自分が思っているよりも大してないと思いますよ。
 

――では、先生自身のユニークな研究はどこから生まれるものだと思いますか?

 ひとつに、様々な事に対する知的好奇心が強いこと、ふたつに、毎日こつこつと前に進もうとする持続力だと思います。革新的なアイディアというものは、少なくとも私の場合、突然ぱっと浮かんでくるわけはなくて、毎日、脳みそを搾り取るように考え抜いて、さらに経験や様々な人の力を借りながらより良いものに進化させていくものと思ってます。
 

――それでは最後に、今までを振り返って、これから起こしていきたいアクションを教えてください。

 今までもそうしてきたつもりですが、常に新しいことを見つける開拓者でありたいです。予期しない結果でも、面白いと思って飛び込むことができるかどうか、ちょっと恐いけれどそれよりも好奇心が勝つからやってみようかと思える心を大切にしたいです。

インタビュー実施日:2015/12/15

インタビューアーからのコメント

~インタビューを終えて~

【印象に残ったキーワード】
・多様性から、イノベーションは生まれる
・多様性を重んじる社会ほど、豊かな社会である

【お話から学んだこと・自身とつなげ将来に生かしたいこと】

  今回お話しを聞いて考えたことは、「日本のものづくりにおいて、多様性を認めていけるような社会基盤を創り上げ、多様な発想からさらなる革新的なモノを生み出していける社会に成長させたい」ということである。

  日本は、本来モノづくりにおいて、その要素技術と現場の自律力・改善力において秀でていると言われている。「言われなくともやる」といった自律性から、上司に言わずとも現場で改善を行っていく日本のものづくりは他国に引けを取らない。また、高品質を追い求める日本の要素技術力の高さは日本の工業においての強みだ。しかしながら、梶村先生がおっしゃっていたように、日本人はどうしても、他人と同じになろうとする。多様な意見を自由に主張できる場や、多様な生き方を認めてあげるような社会体制が整っていない。多様な国籍・人種・価値観を許容する社会基盤がないのだ。

  そこで私は、日本を、多様な価値観やバックグラウンドが普通に認められるような社会へと成長させ、日本を今以上に革新的な技術を生み出していける社会に発展させたい。そして、日本を将来、多様性と創造性で溢れる社会にすることを自分のキャリア構築における目標としたい。

インタビューアー:千田 彩加
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